Pick Up

682. セミナー「栄養改善と生活向上に資するローカル・ランドスケープ由来の食利用を促進するための科学と伝統知の適用」開催報告

関連プログラム
食料 情報

 

682. セミナー「栄養改善と生活向上に資するローカル・ランドスケープ由来の食利用を促進するための科学と伝統知の適用」開催報告

 

先週12月12日、ハイブリッド・セミナー「栄養改善と生活向上に資するローカル・ランドスケープ由来の食利用を促進するための科学と伝統知の適用」が無事開催されました。

本セミナーでは、アフリカやアジアにおいて栄養改善や所得向上に貢献する伝統・ローカル食の利用促進・遺伝資源保全や活用に取り組む専門家に講演いただきました。本セミナーはハイブリッドで開催されましたが、質疑応答においては、遺伝資源の多様性や文化的価値を保全しつつ、対象コミュニティの栄養・環境・経済ニーズを満たす上で、ローカルな食の多様性の潜在性を最大化する方法について、参加者と活発な意見交換が行われました。

食・栄養評価システムの開発に取り組む講演者からは、食料システムのグローバル化により喪失した農業多様性がもたらす栄養問題と、栄養評価・介入において重要な伝統・ローカル食が過小評価されることによる政策バイアスの問題が提起されました。ケニアにおける伝統的葉物野菜を促進するためのコミュニティにおける活動事例や、栄養・健康機能向上のための孤児作物の利用促進に向けたバイオテクノロジーを活用した研究の紹介もありました。経済・開発専門家からは、伝統野菜が抱える問題を多面的にとらえ、生産性向上など供給サイドのみならず、伝統野菜の利用機会の拡大・受容性の改善などの需要サイドを合わせた統合的なアプローチが提案されました。

過去数十年間にわたる食料システムのグローバル化により、世界の食料の75%が12種の作物と5種の家畜に依存しているといわれています。農業多様性の回復は、食料システムの強靭性向上だけでなく、栄養ある食の供給にとっても必要です。講演者の一人がローカルな食を未来のスーパーフード(Future Super Food)と称しましたが、本セミナーは、ローカルな食を政策・科学議論において主流化される必要性に関する認識を参加者で共有する機会となりました。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき、食料プログラム 中島一雄、生物資源・利用領域 星川 健、情報広報室 金森紀仁)


 

関連するページ