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628. 異常事態における世界食料安全保障のための研究プライオリティ

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628. 異常事態における世界食料安全保障のための研究プライオリティ

今日、熱波、洪水、干ばつ、病害虫の発生、金融危機、軍事衝突、こうした事象の全てが世界的に同時進行し、安定的な食料生産・供給を脅かしています。こうした異常な事象が起きる確率が上昇する一方、我々の対応能力は限られています。にもかかわらず、食料システムの強靭性を向上するための解決策を模索する上で、研究者と政策策定者は、しばし個別の問題ごとの対応に追われるケースが多々あります。

One Earth誌に公表された論文は、今後20年間で最も優先されるべき研究課題・リサーチクエスチョンについて、研究者に質問を問いかけました。 その結果、幾つかの分野横断的な優先課題が浮かび上がってきました。そのうちの一つ、同時進行で起こる事象や連鎖的なリスク(compounding events and cascading risks)、について紹介します。

同時進行の災害リスクの例には、サブサハラアフリカにおいて熱波と旱魃が同時に起こるケース、アジアにおけるモンスーンや雪解水の途絶、さらに世界レベルで穀倉地帯を襲うような危機に連続的にさらされるケースがあります。こうした相関した危機をもたらす要因には、複数の地域における気温分布のシフト、エルニーニョ・南方振動や北大西洋振動やロスビー波といった大気循環パターンの攪乱、そして気候の転換点を超えることによる長期的に前例のない天候レジームへの移行、が挙げられます。

食料システムが連鎖的なリスクに晒されることも、次第に懸念事項になってきています。インフラ・輸送・公益事業システムの寸断リスク、また食料供給網の要所の寸断は、食料システムの複数のプロセスや関係者に同時あるいは順次インパクトをもたらします。

論文は、そのほかの優先課題として、脆弱性と適応能力(vulnerability and adaptive capacity)、協調と衝突(cooperation and conflict)について説明しています。

論文は、こうした優先課題に対応するリサーチクエスチョンを整理した結果、食料システムの課題発見・モニタリング・新たな技術の事前評価・食料安全保障改善への洞察を可能とするための可視化と予測の向上(better maps and prediction)、食料安全保障の要点でありながら異常事態で最も影響を受ける農家の強靭性・適応能力強化のための介入(farm-level interventions)、そして食料システムの構造的な制約除去を目指したシステムレベルでの介入(food system transformation)、の3点を挙げました。

論文は、最後の点の食料システム転換について、システムレベルでの介入の必要性については重々認識されているものの、最初の2点のリサーチクエスチョンである、問題の可視化と予測の向上および農家の強靭性・適応能力強化のための介入、なしに実現は不可能であると指摘します。昨年の食料システムサミット等などの国際舞台の場でも、強靭性強化のための食料システム転換が議論の対象となってきました。しかし、現状の食料システムにおけるパワーと資源の不平等な配分状況への懸念によって、どのような解決法を用いて食料システムの強靭性を強化すべきかについて、関係者の意見は割れています。論文は、現状打破の上で、情報の役割を強調しています。


(参考文献)
Zia Mehrabi et al, Research priorities for global food security under extreme events, One Earth (2022). DOI: 10.1016/j.oneear.2022.06.008

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)