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622. 2021/22年版 人間開発報告書

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622. 2021/22年版 人間開発報告書

最近、WHOがCOVID-19パンデミックの終息が視野に入ってきたと発言しましたが、 ロシアのウクライナ侵攻と、世界は相次ぐ危機による不確実性にさらされています。9月8日、国連開発計画は「2021/22年版 人間開発報告書-不確実な時代の不安定な暮らし(The 2021/22 Human Development Report (HDR):Uncertain Times, Unsettled Lives: Shaping our Future in a Transforming World”)」を公表しました。

 

人間開発報告書が最初に公表された32年前からはじめて、各国の保健・教育・生活水準をはかる人間開発指標(HDI)は2年連続で後退し、2016年水準まで落ち込んだことは、2030年までに持続可能な開発目標の達成に向けた進展が消失したことに等しい衝撃です。2020年か2021年の少なくともどちらかでHDIの後退を経験した国々は90%に及び、ラテンアメリカ・カリブ地域、サブサハラアフリカ、そして南アジアの国々がとりわけ打撃を受けています。

COVID-19の変異株が続けざまに現れてきた中、将来もパンデミックが起こりうるという懸念が、技術変化の遅々としたペースや気候変動を巡る不安も相まって、不確実性を高めています。報告書は、不確実性の例として、生物多様性の崩壊により昆虫の媒介がなくなることによる食料生産への不安が、パンデミックによる世界混乱よりも人類の存続を脅かしかねない可能性にも指摘します。

報告書は、新たな不確実性要因として、次を挙げます。

  • 人新世における危険な地球の変化 (The dangerous planetary change of the Anthropocene)
  • 産業革命に匹敵する社会的変革の追求 (The pursuit of sweeping societal transformations on par with the Industrial Revolution)
  • 分裂した社会の不確実性と動揺 (The vagaries and vacillations of polarized societies)

こうした不確実性は、多くの国で社会の分裂や扇動を引き起こす危険があります。報告書は、不確実性の中、我々自身が価値をおくべきことを見直し、前向きな姿勢で、将来のための社会的変革をもたらしうるイノベーションに取り組む必要性を強調しました。


(参考文献)
UNDP (United Nations Development Programme). 2022. Human Development Report 2021-22: Uncertain Times, Unsettled Lives: Shaping our Future in a Transforming World. New York.  https://news.un.org/en/story/2022/09/1126121 


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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