979. 2023/24年版 人間開発報告書

3月13日、国連開発計画は「2023/24年版 人間開発報告書 (HUMAN DEVELOPMENT REPORT 2023-24 Breaking the gridlock: Reimagining cooperation in a polarized world)」を公表、不均一な開発の展開、悪化する格差、エスカレートする政治分断、等に起因する膠着状態が危険領域に達していることに警鐘を鳴らし、世界的な相互依存関係を見直し、推進するうえで、国際的な協調が果たすべき役割に期待を寄せました。

2020-21年にCOVID-19パンデミックを受け、平均余命・教育・識字及び所得指数の複合統計である人間開発指標（HDI）が2年連続で後退しましたが、2023年、HDIは大幅に改善しました。一方平均的なHDIの改善は格差を覆い隠しており、富裕国でかつてない開発が達成された一方で、世界の貧困国の半数ほどではCOVID危機以前の開発水準に甘んじました。

報告書からの主要な統計のハイライト：

• 2023年、38のOECD全加盟国は2019年水準に比べ高いHDIを達成しました。
• 2020-21年にHDIの落ち込みを経験した35の後発途上国の半数以上（18か国）が未だに2019年の水準を回復できていません。
• 全ての途上国地域は、2019年以前のトレンドから期待されていたHDIを達成できておらず、一段階低いHDIトレンドにシフトしたようにも見え、人間開発達成の見込みに暗雲が立ち込めています。
• 人間開発の機会喪失は、とくにアフガニスタンとウクライナで深刻で、アフガニスタンのHDIは10年後退、ウクライナのHDIは2004年以来最低の水準となっています。
• ポピュリズムな政府が支配的な国ではGDP成長率が低い傾向にあり、ポピュリスト政権が15年続くと、そうでない国の場合よりも一人当たりGDPが10％低いと推計されました。

悪化する格差を懸念し、報告書は、とくに次の4分野において、国際的な公共財の創造に向けた協力を呼びかけました。

• 人新世におけるかつてない困難に立ち向かうにあたり、気候安定化に必要とされる地球公共財  
• 平等な人間開発実現に向けてテクノロジーを公平に使いこなすためのデジタル公共財
• 人道支援や低所得国への伝統的な開発援助を補完する新たな国際協力路線のための、新規および既存の金融メカニズムの拡張 
• 人々の声を反映し誤情報に適切に対処する新たなガバナンス・アプローチを通じた政治的分断の抑制　

（参考文献）
UNDP (United Nations Development Programme). 2024. Human Development Report 2023-24: Breaking the gridlock: Reimagining cooperation in a polarized world. New York. https://hdr.undp.org/content/human-development-report-2023-24

（文責：情報プログラム　飯山みゆき）