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425. 都市化と農業多様性

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425. 都市化と農業多様性

今日、50%以上の人類が都市部に居住しており、2050年までにこの数値が68%に達すると予測されています。都市化は、グローバルレベルで、人口動態的、生物物理学的、経済的、文化的、社会的変化をもたらす多面的なプロセスです。都市化拡大は、気候、生物多様性、土地利用、人類の食生活、に影響を及ぼします。都市化と食料の生産・消費の間の関係性は、次第にフードシステムの持続性にとって重要な要因であると認識されるようになっています。

都市化は農業多様性(agrobiodiversity)―農業エコシステムだけでは なく食の生産・消費の生物多様性(biodiversity in food production and consumption as well as agricultural ecosystems)― に負の影響を与えるのではないか、との「通説 myths」があります。最近(11月19日)、One Earth誌に公表された論文は、都市化と食料多様性の関係を、多面的に分析する枠組みを提案し、上述の通説のように、都市化は必ずしも農業多様性とトレードオフの関係にあるわけではないことを示しました。

例えば、都市・都市郊外の土地利用に関して、食料と栄養多様性の維持に貢献する、菜園や果樹園・乳業など多様な食品を供給しうるアプローチがあります。アメリカでは幾つかの都市部は卵や牛乳に関しほぼ地域での自給を達成しているのに対し、果物・野菜では12%・16%にとどまっています。他方、ベトナム・ハノイでは都市・郊外農業が野菜や豚・魚の62-83%の供給を担っているとされました。一つの都市内部でも、民間あるいは公営の菜園やあらゆる経営面積の農園や屋上農園などを通じて、都市住民に供給する食料の多様性を担保することが可能です。国レベルでのサプライチェーンは、標準化され生物学的に一様化された作物・家畜産業を奨励すると同時に、部分的に多様化された農業を支援する側面を持っており、多様性という意味で良い面と悪い面の双方を持っているようです。

論文著者らによると、今後、最も急激な都市化を経験するのはアフリカであるとしています。アフリカでは、小規模農家・菜園を伴う様々なサイズの大都市や郊外都市が地理的に散らばり、食料栄養安全保障をいかに維持していくのかが大きな課題になると考えられます。全ての食料が都市周辺でまかなわれるわけではないため、ローカル、国レベル、国際的なサプライチェーンの安定性がカギとなります。

1950年代―60年代の緑の革命以来、途上国において少数の主食商品作物に注力した農業近代化によって、貧困層は安価だが多様性に欠けた食生活を送るようになる一方、伝統的な食料・農業慣行はしばし時代遅れとみなされることもありました。しかし都市貧困層はしばし先祖代々の食生活を維持し続けていることもあり、文化的に多様な食へのアクセスは栄養安全保障の向上にもつながります。

本年は国連の定める国際果実野菜年です。野菜や果物は、都市化する国際社会においても、食・栄養の多様性を維持していく上で、注目すべき重要な食品群です。国際農研は、FAO駐日連絡事務所と共催で、東京栄養サミット(N4G)公式サイドイベント「野菜・果物―地球と人間の健康のための研究と行動の機会」シンポジウムを2021年12月6日(月)にオンライン開催します。本シンポジウムでは、野菜・果物が健康・開発・環境に貢献するための研究の可能性について紹介します。ぜひご登録ください。

シンポジウム:野菜・果物―地球と人間の健康のための研究と行動の機会
プログラムhttps://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2021/e20211206 
開催日:2021年12月6日(月)
場所:オンライン(要・事前登録)
受付期間:2021年11月15日(月) 09:00 - 2021年12月6日(月) 15:00
申込受付https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2021/e20211206/entry
申込締切:2021年12月6日(月) 15:00

問い合わせ先:国際農研 情報広報室
Emailevent-jircas@ml.affrc.go.jp
URL: https://www.jircas.go.jp/ja/form/inquiry

参考文献
Karl S. Zimmerer, Urbanization and Agrobiodiversity: Leveraging a Key Nexus for Sustainable Development, One Earth (2021). https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2590332221005984 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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