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401. サバクトビバッタの特異な繁殖行動を解明 -農薬使用量の減少に繋がる効率的な防除が可能に-

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401. サバクトビバッタの特異な繁殖行動を解明 -農薬使用量の減少に繋がる効率的な防除が可能に-

サバクトビバッタ(以下、バッタ)は、西アフリカからインドにわたる半乾燥地域に生息していますが、しばしば大発生し、深刻な農業被害を引き起こします。2020年から2021年にかけて、東アフリカと南アジアで大発生し、深刻な農業被害が報告されています。バッタの発生地は広大で、特に成虫は長距離飛翔するため、農薬散布による防除は困難です。国際農研では、バッタの被害の軽減を図るため、バッタの生態に基づいた効率的な防除技術の開発を目的とした研究を、第4期中長期計画(2016-2020年度、病害虫防除プロジェクト) から第5期中長期計画(2021-2025年度、越境性害虫プロジェクト) にかけて実施しています。Pick Upでは、これまでにバッタの防除技術開発の意義と方向性について議論したほか、 東アフリカにおける気候変動とバッタ大発生に関する論文や、 COVID-19とバッタの世界食料市場インパクトに関するシナリオ分析に関する論文の紹介を行ってきました。 今回は、農薬使用量の削減に繋がる、バッタの繁殖行動に関する国際農研の研究成果について紹介します。

本研究は、モーリタニア国立サバクトビバッタ防除センター、フランス国際農業開発センター、モロッコ国立サバクトビバッタ防除センターと共同で実施しました。サハラ砂漠で野外調査を行った結果、性成熟したバッタの成虫は、雌雄どちらかに性比が偏った集団を形成していました。メスに性比が偏った集団では、ほとんどのメスは卵巣発達中で、交尾していませんでした。一方、オスに性比が偏った集団では、メスは産卵直前の大きな卵を持っており、ほとんどが交尾していました。詳しく調査したところ、日中、オスの集団に産卵直前のメスが飛来して交尾し、夜間にペアで集団産卵していました。バッタは交尾中、オスはメスの背中に乗ってしがみつくため、メスは飛んで逃げることができず、鳥等の天敵から襲われやすくなります。雌雄が同居していると、オスは執拗にメスに交尾を迫るため、卵巣発育中のメスはオスと別居することで交尾を避け、産卵するときだけオスにガードされて安全に産卵していると考えられます。雌雄が集団別居することで雌雄間の対立を解消しつつ、パートナーに効率よく出会えていると推察されます。以上の結果から、集団産卵中のペアはその場に数時間留まるため、日中、オスの集団を発見してもすぐに防除せず、夜間の集団産卵のタイミングを見計らって防除することが効率的であることが明らかになりました。バッタの生態を応用することで、必要以上に農薬を使用しない、環境や健康に配慮した防除に結び付くことが期待されます。

農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定しました。 同戦略では、化学農薬の低減による環境負荷軽減に取り組むこととなっています。本研究では、バッタの防除に使用する化学農薬の低減に寄与する成果が得られました。国際農研は、今後も、バッタなど世界的に大きな問題となっている越境性害虫に対する、環境負荷が小さい防除手段の開発を推進します。

本記事は、令和3年10月12日のプレスリリースを改変・追記し再掲したものです。 
サバクトビバッタについては、国際農研に寄せられた質問に対する回答を中心に解説したページを公開しています。 


参考文献
Maeno, K.O., Piou, C., Ould Ely, S., Ould Mohamed, S., Jaavar,M.E.H., Ghaout, S. and Ould Babah Ebbe, M.A.Density-dependent mating behaviors reduce mating harassment in locusts (2021) PNAS. https://doi.org/10.1073/pnas.2104673118

(文責:生産環境・畜産領域 前野浩太郎・小堀陽一、食料プログラム 中島 一雄)