国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

機械収穫効率が高いエリアンサスの栄養繁殖品種「JEC1」の育成

要約

エリアンサスの栄養繁殖品種「JEC1」は、種子で増殖する既存品種「JES1」と同等の乾物収量を示し、1株あたりの茎数と乾物重では個体間の均一性が「JES1」より高い。そのため、「JEC1」の機械収穫効率は「JES1」より高く、バイオマス原料の効率的な生産が可能である。

背景・ねらい

二酸化炭素排出量の削減や地域活性化に向けて、草本系資源作物に由来するバイオマスの利活用が重要な役割を果たすと考えられる。エリアンサス(Erianthus arundinaceus、和名:ヨシススキ)は多年性のイネ科植物であり、我が国の暖地および温暖地での生産力が高いため、将来的なバイオマス事業における原料として期待できる。一方で、エリアンサスによる原料生産の実用化には、低コスト生産を可能にする品種開発が必要となる。これらの背景から、わが国初の品種として「JES1」が育成された。「JES1」は増殖効率を高めるために種子を利用して増殖する品種であるが、品種内個体間の茎数や乾物重のばらつきが比較的大きく、機械収穫での作業効率が低下するという問題点がある。そこで、品種内個体間のばらつきを抑え、機械収穫効率を改良することを目標に、栄養繁殖で増殖を行う品種を開発する。

成果の内容・特徴

  1. 「JEC1」は、立型晩生の「JW4」を母本とし、「JW630」、「KO1」、「KO2」、「KO2立」との放任受粉で得られた集団から選抜した栄養繁殖品種である。
  2. 農研機構 九州沖縄農業研究センター(以下九沖農研、熊本)における「JEC1」の出穂始日は、株が確立した2年目では晩生である「JES1」より10日早く、「KO2立」より8日遅い。「JEC1」の早晩性は中生に属する(表1)。
  3. 九沖農研(熊本)において「JEC1」から採取した小花からの発芽率は9.4%である(表1)。
  4. 「JEC1」の草型は中間型であり、やや立型の「JES1」より開帳している(表1、図1)。
  5. 「JEC1」の2年目乾物収量は3.16t/10aであり、「JES1」と同程度である(表1)。
  6. 栄養繁殖で増殖する「JEC1」の1株あたりの茎数および乾物重の変動係数は、種子で増殖する「JES1」より有意に小さい(表2)。そのため、飼料作物収穫機(CHAMPION 3000)による「JEC1」の機械収穫効率(9.3t/hr)は、「JES1」(7.3t/hr)より有意に高い(図2)。

成果の活用面・留意点

  1. エリアンサスを主原料として用いるバイオマス事業で活用する。当面はペレットボイラー等の熱利用に向けた技術開発、実証研究およびパイロット試験等における利用が見込まれる。
  2. 種苗は、茎部の植えつけや株分けにより苗を養成し増殖する。将来的に組織培養を利用した種苗増殖技術が実用化すれば、種苗の増殖効率の向上が可能になる。
  3. エリアンサスは、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」(平成27年3月)の重点対策外来種に該当するため、栽培に当たっては栽培者の管理下に置くことで雑草化を防止することとし、危険性が高い小笠原・南西諸島では栽培しない。

具体的データ

  1. 表1「JEC1」の主要特性(九沖農研、熊本)

    表1 「JEC1」の主要特性(九沖農研、熊本)
    1. 異なる文字間(a,bおよびc)は Tukey's HSDにおいて品種間に有意水準5%で有意差があることを示す.
    2. 組織培養により栄養増殖した「JEC1」の種苗を供試した.
    3. 比較品種・系統.
    4. 稔・不稔を含む小花(JEC1は1451個、JES1は1352個、KO2立は1264個)からの発芽数から算出した。本州で収集したエリアンサス遺伝資源「JW630」の発芽率は47.3%である.
  2. 表2 「JEC1」の1株あたり茎数、乾物重の変動係数

    表2 「JEC1」の1株あたり茎数、乾物重の変動係数
    1. 2012年6月に植付けた生産力検定試験圃場の1年目、2年目の結果
    2. 各形質の調査個体数は15(5個体/反復)とした
    3. 変動係数(CV)について行った2元分散分析の結果を示す*は有意水準5%で有意差あり、**は有意水準1%で有意差あり、nsは有意差無しを意味する
    4. 草丈の変動係数には、両品種間で有意差は認められなかった
  3. 図1 「JEC1」および「JES1」の草姿
    図1 「JEC1」および「JES1」の草姿
  4. 図2 「JEC1」の機械収穫効率
    図2 「JEC1」の機械収穫効率
    1. 飼料作物収穫機「CHAMPION 3000」による1時間あたりの収穫乾物重量を示す
    2. 2010年6月に植付けた圃場の3年目、4年目、5年目の収穫試験結果である
    3. 飼料作物収穫機の運転は、2012 は操縦者A、2013 および2014 は操縦者B が行った
    4. *は、系統と年次を要因とした2元分散分析において有意水準5%で品種間に有意差があること
プログラム名

食料安定生産

予算区分

交付金熱帯作物開発

受託農林水産省・草本を利用したバイオエタノールの低コスト・安定供給技術の開発

研究期間

2015年度(2012-2015年度)

研究担当者
  • 寺島 義文 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • 我有 (農研機構 九州沖縄農業研究センター)
  • 上床 修弘 (農研機構 九州沖縄農業研究センター)
  • 杉本 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • 発表論文等

    我有、寺島ら 「JEC1」品種登録出願(第30535 号 2015 年10 月15 日)

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