インド型イネの遺伝的背景で広い窒素栄養濃度域で効率良く根を伸長させるQTL

要約

インド型イネ品種IR64の遺伝的背景をもつ染色体挿入系統YTH183は根の伸長に関する量的形質遺伝子座(QTL)qRL6.4-YP5を有する。qRL6.4-YP5をIR64の遺伝的背景に導入した準同質遺伝子系統は、qRL6.4-YP5が導入されたことにより窒素栄養濃度の変化に良く対応して総根長が大きくなる。

背景・ねらい

イネの生産性向上と安定化には、根の機能や形態を改良することが必要である。国際稲研究所で開発されたインド型水稲IR64は、熱帯地域で広く栽培されているとともに、新品種作出の親品種としても広く用いられている。一方、IR64の遺伝的背景をもつYTH183は熱帯や温帯地域でも高生産性が確認されてきているが、その遺伝要因は不明である。さらに、IR64の遺伝的背景において広い窒素栄養濃度域で効率よく根を伸長させるQTLは見出されていない。このためYTH183の根の形態に着目し、それに関わるQTLの同定と作用を明らかにする。このことにより、インド型品種の遺伝的背景を持つ品種群における、根の遺伝的改良のための基礎材料を確保する。

成果の内容・特徴

  1. New Plant Type品種IR69093-41-2-3-2(YP5)に由来する染色体挿入系統YTH183は、IR64に比べて根が長い(図1)。
  2. YTH183は根を伸長させるQTL(qRL6.4-YP5)をもち、qRL6.4-YP5をIR64の遺伝的背景に導入した準同質遺伝子系統(NIL)もIR64に比べ根が長くなる(図1)。
  3. qRL6.4-YP5は第6染色体の長腕の分子マーカー(RM6395RM8242)の間に位置し、YP5に由来する染色体挿入系統群を用いた分離分析では高い寄与率(R2=0.37)を示し、育種利用が容易である(図2)。
  4. NILの根長の総和は、IR64に比べて常に長く、窒素の濃度の増加に伴い根が伸長する(表1)。
  5. NILの最長根は、常にIR64に比べて長く、窒素濃度50 mMまでは根が良く伸長するが、500 mMでは伸長が認められない(表1)。
  6. qRL6.4-YP5はIR64の遺伝的背景で根の本数への関与はない(表1)。

成果の活用面・留意点

  1. 根の伸長を窒素濃度に対応して効率よく促進するqRL6.4-YP5は、窒素の吸収・利用に関する遺伝的改良の遺伝子源として利用できる。
  2. qRL6.4-YP5のDNAマーカー情報は、IR64などのインド型品種の遺伝的背景を持つ品種群の根の形態改良のためのマーカー選抜に活用できる。
  3. 育成したNILは、熱帯地域各国で広く用いられているIR64を遺伝的背景としていることから、開発途上地域での食料安定生産に寄与する育種素材として活用できる。
  4. このNILの分譲については、JIRCAS企画調整部情報広報室に問い合わせる。

具体的データ

  1. 図1 qRL6.4-YP5を有するNILおよびYTH183の幼植物の表現型 5mMのNH4Clを与え、水耕法で8日間栽培。バーは50 mmを示す。

    図1 qRL6.4-YP5を有するNILおよびYTH183の幼植物の表現型 5mMのNH4Clを与え、水耕法で8日間栽培。バーは50 mmを示す。

  2. 図2 第6染色体長腕に検出された根の伸長","title":"図2 第6染色体長腕に検出された根の伸長

    qRL6.4-YP5の存在領域を示す。DNAマーカーの日本晴塩基配列上での位置を示す。

  3. 表1 qRL6.4-YP5をIR64の遺伝的背景に導入したNILの異なる窒素濃度における根の伸長・形成に関する反応

    表1 qRL6.4-YP5をIR64の遺伝的背景に導入したNILの異なる窒素濃度における根の伸長・形成に関する反応水耕法で8日間栽培したデータ。 窒素栄養は唯一の窒素源としてNH4Clを与えた。 **:t検定により1%レベルでIR64に比べ有意差があることを示す。

所属

国際農研 生物資源・利用領域

分類

研究A

研究プロジェクト

[イネ創生] 環境共生型稲作技術の創生

プログラム名

食料安定生産

予算区分

交付金 » イネ創生

研究期間

2014年度(2011~2015年度)

研究担当者

小原 実広 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 10455248
見える化ID: 001771

石丸 ( 生物資源・利用領域 )

安彦 友美 ( 九州大学 )

藤田 大輔 ( 農研機構 作物研究所 )

科研費研究者番号: 80721274

小林 伸哉 ( 農研機構 次世代作物開発研究センター )

科研費研究者番号: 70252799

柳原 誠司 ( 生物資源・利用領域 )

見える化ID: 001780

福田 善通 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )

科研費研究者番号: 40399374
見える化ID: 001798

ほか
発表論文等

Obara et al. (2014) Plant Biotechnol. Rep. 8:267-277.

https://doi.org/10.1007/s11816-014-0320-9

日本語PDF

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English PDF

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ポスターPDF

2014_B07_poster.pdf277.93 KB