国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

イネの一穂籾数を増加させるQTLを導入したIR64の準同質遺伝子系統群

要約

イネ(Oryza sativa L.)品種IR64を遺伝的背景とし籾数を増加させるQTLをもつ準同質遺伝子系統群は、インド型品種の穂重型育種素材として活用できる。

背景・ねらい

国際稲研究所(IRRI)で育成されたインド型水稲品種IR64は、高品質で病虫害に強く、広く熱帯地域で普及している。IR64の収量性のさらなる遺伝的改良を通じ、開発途上国における食糧安定生産を実現するため、穂重型のNew Plant Type(NPT)由来の一穂籾数を増加させる量的遺伝子座(QTL)を導入した準同質遺伝子系統群を育成する。
(NPTは国際稲研究所(IRRI)が熱帯日本型の遺伝子を導入し多収性を目指して開発した新しい草型を持つ品種)

成果の内容・特徴

  1. 異なるNPT品種に由来する1穂籾数を増加させる5種のQTLは、ともに第4染色体の長腕に座乗する(図1、表1)。
  2. 準同質遺伝子系統群IR64-NIL2~6は、IR64に比べて穂が大きく(図2)、一穂籾数はIR64が約140であるのに比べて、準同質遺伝子系統は196~239であり、40-60%増加する(表1)。
  3. 一穂籾数の増加は、主に2次や3次枝梗着生籾の増加に起因し、増加程度はドナーのNPT品種によって異なる(表1)

成果の活用面・留意点

  1. 育成された系統は、各国で普及されているインド型品種のIR64が遺伝的背景となっていることから、熱帯等の環境条件に適しており、途上国での食糧安定生産に寄与する育種素材や品種候補系統として活用できる。
  2. 育成された系統は、遺伝子・環境相互作用解析などの実験材料として利用できる。
  3. 各QTLのDNAマーカー情報は、遺伝解析やマーカー選抜による一穂籾数増加系統の育成に活用できる。
  4. 開発した系統間で穂の構造に変異があり、導入したQTLの異なる対立遺伝子の効果によるものか、あるいは導入した染色体領域上の他の遺伝子によるものかを確認する必要がある。
  5. 開発した系統の一穂籾数の増加が収量に及ぼす効果の検証が必要である。
  6. これらの準同質遺伝系統群の分譲については、JIRCAS企画管理室に問い合わせる。

具体的データ

  1. 図1 第4染色体長腕に検出された一穂籾数を増加させるQTLの座乗位置
  2. 表1 一穂籾数を増加させるQTLの近傍DNAマーカーとIR64の遺伝的背景に導入した準同質遺伝子系統における穂の構造
  3. 図2 IR64およびその準同質遺伝子系統の穂の形態
所属

国際農研生物資源・利用領域

分類

研究A

プログラム名

資源環境管理

予算区分

交付金気候変動対応

拠出金IRRI-日本共同研究プロジェクト

研究期間

2012年度(2005~2012年度)

研究担当者
  • 小林 伸哉 (農研機構 作物研究所)
  • 福田 善通 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • 石丸 (生物資源・利用領域)
  • 藤田 大輔 (農研機構 作物研究所)
  • Tagle Analiza G. (国際稲研究所)
  • Ebron Leodegario A. (国際稲研究所)
  • 発表論文等

    Fujita et al. (2012), Breeding Science. 62:18-26

    日本語PDF
  • PDF icon Download 2012_03_A4_ja.pdf (84.24 KB)
  • English PDF
  • PDF icon Download 2012_03_A4_en.pdf (149.35 KB)