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316. 大豆の大きさと形を制御するメリット

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316. 大豆の大きさと形を制御するメリット

納豆、豆腐、味噌、醤油、えだまめなどの原材料である大豆は日本人にとって非常に身近な作物です。世界的に、加工食品以外に食用油の原料のほか、タンパク質が豊富なことから家畜の飼料として利用されるなど、最も経済的に重要な作物の1つです。商品貿易のデータを取り扱ったResourceData.Earthダッシュボードによると、2019年に取引された農産物は重量ランク順に穀物(507mt[百万トン])、油脂作物(392mt)、果樹野菜(181mt)で、品目別では小麦(214mt)を超えて大豆(239mt)の取引量が1位でした。 価格ベースでも、果樹野菜($234bn[十億ドル])、油脂作物($188bn)、穀物($135bn)で、品目別では果物(fruits & berries: $122bn) に次に大豆($99.3bn)の取引額が2位でした。

大豆品種は、色や大きさも様々で、それぞれに用途も違います。大豆の大きさは収量を決定する重要なファクターであり、形は食品産業的に見ても加工を行う上でとても重要です。用途に応じて望ましい大きさや形の大豆品種を開発するには、形質を決定する遺伝子を解明する必要があります。作物の品種開発において、遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の解明が重要です。DNAの塩基配列には遺伝にかかわる情報が符号化されており、そうした遺伝情報を解析する基本手段としてDNAシークエンシングの手法が開発されてきました。

国際農研では、種子の大きさと形が異なるダイズ品種およびその交雑後代 のDNA配列を短時間で決定できる次世代シーケンサーを用いて解析し、ダイズ種子の大きさと形状を制御する染色体上のDNA領域(量的形質遺伝子座:QTL)を多数同定しました。さらに複数年 において検証実験を重ねた結果、20本あるダイズの染色体のうち第2番染色体に存在するQTLを種子の形状に関連する候補遺伝子として絞り込みました。この研究結果は、 多収で加工に適する大豆新品種の開発に向けて種子の大きさと形状形質の改善を目的とした育種には重要な知見です。さらに詳しい情報は、4月16日にFrontiers in Genetics誌にて公表されました。 詳しくは論文をご覧ください。

参考文献:
Giriraj Kumawat and Donghe Xu (2021) A Major and Stable Quantitative Trait Locus qSS2 for Seed Size and Shape Traits in a Soybean RIL Population. Front. Genet.
https://doi.org/10.3389/fgene.2021.646102

(文責:生物資源・利用領域 許 東河)

 

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