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1057. 熱帯林劣化における人為的なインパクトは想定以上に大きい
1057. 熱帯林劣化における人為的なインパクトは想定以上に大きい
熱帯林における選択的伐採・森林火災・エッジ効果(edge effect:生態学において、生物の生息地の境界部分が外部からの影響を強く受けること)は、カーボン排出・生物多様性喪失の主要原因です。しかしながら、世界の熱帯地域全体において実際の影響度と長期的なインパクトについては不確実性も大きいです。
Nature誌で公表された論文は、衛星搭載のLiDAR(light detection and ranging :測定対象物に対してレーザー光を走査しながら照射し、光が反射して戻ってくるまでの時間を計測することで対象までの距離や方向、位置、形状などを測定)による衛星リモートセンシングデータを用い、樹冠高やバイオマスを推計し、熱帯湿潤林の変化の数量化を試みました。
分析の結果、森林高は選択的伐採と火災によりそれぞれ15%と50%減少し、20年後でも回復率は低いと推定されました。農業と道路の拡張により、林冠の高さと森林境界のバイオマスは20%から30%減少し、森林内1.5kmまで測定可能な影響が観測されました。残存する熱帯湿潤林の18%(約206Mha)にエッジ効果が見られ、以前の推定値に比べて200%以上大きい面積に相当しました。
樹冠が50%以上失われている劣化した森林は、その後の森林破壊に対して著しく脆弱です。総じて、調査結果は、最近の国連気候変動に関する国際連合枠組条約や生物多様性条約における誓約達成に向け、森林劣化を防ぎ、すでに劣化した森林を保護するためにより大きな努力が必要なことを示しています。
(参考文献)
C. Bourgoin et al, Human degradation of tropical moist forests is greater than previously estimated, Nature (2024). https://www.nature.com/articles/s41586-024-07629-0
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)