研究成果情報 - タイ

国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。

各年度の国際農林水産業研究成果情報

  • ツマジロクサヨトウ防除のための天敵昆虫増殖費推計モデルによる経済性評価(2025)
    タイにおけるツマジロクサヨトウ防除を対象として構築された増殖費推計モデルは、天敵昆虫増殖の経済性を汎用的に評価する手法を提供する。このモデルによる分析では、タマゴバチの増殖費は主要農薬と比べて著しく高いとはいえず、化学的防除の一部を補完・代替する選択肢として位置付けられる。また、放飼面積当たりの増殖費を削減するためには、労働負荷を低減し生産規模を拡大することが有効であると示唆される。
  • 淡水エビ類で初の生殖細胞凍結保存による遺伝資源長期保存技術(2025)
    配偶子や初期胚の凍結保存が困難な甲殻類において、生殖細胞の凍結保存は全遺伝情報を保存できる有効な手法である。東南アジア原産オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii )の生殖細胞は10%ジメチルスルホキシドを凍結保護剤に用いた超急速凍結法により、凍結融解後も高い回収率および生残率が長期間にわたり維持される。本成果は、淡水性エビ類で生殖細胞凍結保存技術を確立した初の報告であり、オニテナガエビやその他甲殻類の将来的な優良系統の維持や育種基盤の構築に資する。
  • タイ東北部における小型テナガエビ類の生活史特性と資源管理方策(2025)
    インドシナ半島内陸部で重要な水産資源である小型テナガエビ類 Macrobrachium lanchesteri 種群は、タイ東北部において周年産卵を行うが、産卵は雨季中盤の6~8月に集中し、11~12月には停滞する。9~11月には同年生まれの未成熟個体が漁獲対象資源に加入し、翌年3~5月に孵化後1年未満で初回成熟・産卵に至る。本研究で明らかとなったこれらの生活史特性は、同地域で実施されている禁漁措置の有効性評価および資源管理方策の検討に資する基盤情報となる。
  • 45年超の長期連用試験から熱帯における畑地土壌炭素貯留量を算定(2024)

    タイ農業局が保有する45年超の長期連用試験のデータを解析し土壌炭素貯留量を算定した。化学肥料や有機物は単独で施用するより両者を組み合わせることで大きい土壌炭素貯留量が得られる。また、砂質土壌では土壌炭素貯留量の増加は肥沃度の向上に寄与しキャッサバの収量を増加させる。

  • インドシナ諸国におけるツマジロクサヨトウ推奨防除手法の体系化と費用要件(2024)

    インドシナ諸国政府の多くは、ツマジロクサヨトウ防除のため化学農薬に加え、薬剤抵抗性管理や生物的防除を推奨している。一方、飼料用トウモロコシ農家の害虫管理は安価な化学農薬の葉面散布が主流で、その費用は限定的である。よって、化学農薬代替技術は十分低コストであることが求められるが、特に種子処理や天敵昆虫の放飼は導入コストを抑えられる可能性があり、技術開発・普及において注目される。

  • ツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性を国際間で比較するための簡易検定法(2023)
    検定に供試する個体の採集法、入手が容易な材料で作成する人工飼料による供試虫の累代飼育法、人工飼料を用いる殺虫剤塗布法から構成される簡易検定法を用いることで、越境性害虫であるツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性を容易に国際間で比較できる。
  • サトウキビとエリアンサスの属間交配によりサトウキビ根系特性の改良が可能である(2023)

    エリアンサスは、乾燥ストレス耐性と関連する深根性やリグニンの根への沈着が多い特性を具えるサトウキビの近縁属遺伝資源である。サトウキビとエリアンサスの属間雑種F1は、サトウキビより土壌深層の根長密度が大きく、根のリグニン含量が多いことから、エリアンサスをサトウキビの育種に利用することで、サトウキビの乾燥ストレス耐性に関連する根系特性の改良が可能である。

  • 東南アジア肉牛反芻胃由来メタン排出推定式(2022)

    東南アジアにおける肉牛反芻胃由来メタン排出量は、乾物摂取量、飼料成分(中性デタージェント繊維)、体重を説明変量に用いた推定式により、現行推定方法よりも高精度で簡易に推定できる。

  • タイに自生するエリアンサス遺伝資源の多回株出し栽培における農業形質情報(2021)
    タイに自生するエリアンサス遺伝資源は、多回株出し栽培における農業形質に大きな遺伝的多様性を有する。多回株出し栽培での農業形質情報や生産性等が優れる育種素材は、タイにおけるサトウキビの育種やエリアンサスの新規資源作物としての育種で利用できる。
  • サトウキビ白葉病対策としての健全種茎増殖・配布マニュアル(2020)

    サトウキビ白葉病対策として健全種茎を増殖するための圃場管理技術と生産物の配布法に関する説明、LAMP法による病原体の検出手順、生長点培養法による無病苗生産手順から構成される、健全種茎生産を行う者向けのマニュアルである。

  • 数値モデルの活用による長粒米向け籾摺りロールの開発(2020)

    ロール式籾摺り機における籾摺りの数値解析では、長粒米は短粒米に比べ高い摩擦損失をロールに蓄積し、ロール寿命が短くなる。表面摩擦係数と素材の粘弾性の指標であるtan δを適切に選定することで、高脱ぷ率と長寿命を両立したポリウレタンエラストマーによる長粒米向け籾摺りロールを開発できる。

  • タイ発酵型米麺の液状化及び予防のためのpH管理の経営的評価(2020)

    タイ発酵型米麺の液状化は、小規模な発酵型米麺企業に大幅な減収と経営の不安定化をもたらし得る。麺の液状化予防のための製造工程におけるpH計測及び、酸性の洗浄水による麺の洗浄にかかる費用は一般的な保存料を使用するよりも安価であり、経営安定化の効果が大きい。

  • ウシエビ養殖初期に糸状緑藻と微小巻貝を摂餌させることで収益性が向上する(2020)

    ウシエビ養殖初期における補助的生餌料として、糸状緑藻(ジュズモ属の一種)を総消費餌料量の8%、微小巻貝(ミズゴマツボ属の一種)を同2%、人工飼料とともに摂餌させることにより、ウシエビ養殖の収益性が約1.5倍向上する。

  • タイ発酵型⽶麺の液状化は、麺をpH 4程度の酸性に保つことで抑制できる(2019)

    タイ発酵型米麺の液状化は細菌による澱粉分解に起因し、麺のpHが6以上になると誘発されるが、pH 4程度に保つことで抑制される。液状化の抑制には、製麺後の発酵型米麺および原料である発酵米粉がpH 4程度の酸性であることの確認や、製麺工程で麺の洗浄に用いる水を酢酸等の食用可能な有機酸によりpH 4程度に調整することが推奨される。

  • 東南アジアにおける肉牛からの消化管発酵由来メタン排出量の推定(2018)

    東南アジアにおける肉牛からの消化管発酵由来メタンの排出量と変換係数は、飼料摂取量、飼料の化学成分と飼料消化率から推定できる。メタン排出量の推定に利用されているメタン変換係数の東南アジア肉牛での値は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による既定値よりも高い。

  • キャッサバパルプは肉牛用飼料に適し、成分の季節・工場間変動も小さい(2018)

    タイ東北部のキャッサバデンプン抽出工場から排出されるキャッサバパルプの化学成分の工場や季節による変動は比較的小さく、これを飼料中50%(乾物ベース)まで混合した飼料を肉用牛に給与した場合、良好な増体成績を得られる。

  • インドシナ半島の発酵型米麺のタンパク質分解と特徴的なテクスチャの関連性(2016)

    インドシナ半島で生産、消費される発酵型米麺では、原料米のコメ貯蔵タンパク質の一部が選択的に分解を受けることで、伸展性に優れたテクスチャとなる。発酵させない場合、麺のゲルの破断点となる構造がタンパク質により形成されるため、伸展性に乏しい。

  • タイ東北部の砂質土壌における炭の添加は、チークの成長を向上させる(2016)

    タイ東北部の砂質土壌に炭を添加することにより、保水性が改良されるばかりでなくリンの吸収が促進され、チーク苗の根の成長が促進される。

  • アセアン国別食料需給モデル作成・運用マニュアルによる成果の普及(2016)

    アセアン加盟各国を対象として食料生産・消費の中期予測を行うための非均衡モデルを作成・運用するためのマニュアルを作成し広く公表する。マニュアルは、モデルの作成法を基礎的な計量経済学の概念と共に示し、モデルの理解・作成・運用に寄与する。

  • サトウキビ野生種を利用しタイで共同育成したサトウキビ新品種(2015)

    新品種としてタイで登録されたサトウキビ3品種「TPJ03-452」、「TPJ04-713」、「TPJ04-768」を、サトウキビ野生種との種間交雑を利用して育成した。「TPJ03-452」と「TPJ04-768」は、砂糖収量は普及品種と同程度で繊維収量は多い。「TPJ04-768」は、厳しい乾季を持つ東北タイでも株出し栽培における収量減が少ないため、多回株出し栽培が期待される。