研究成果情報 - タイ
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- 根系分布からみた熱帯アジアの陸稲の水ストレス高感受性(1999)
熱帯アジアの陸稲は根系分布が一般に浅く、水ストレス下においても深層の根長密度が増加せず、根長あたりの水吸収速度も高まらないため、水ストレスに対して感受性が高い。燐酸施肥は深層での根の形成を促進し、水吸収を高める。
- 精米からのインディカ品種判別法(1999)
精米ゲル結合水の離水を利用した精米一粒からの簡易なDNA抽出法を開発し、マイクロサテライトマーカーを利用した品種判別法と組み合わせることによって、精米での混米の判別が可能である。
- タイ国東北部における在来反芻家畜の消化特性とエネルギー要求量(1999)
タイ在来種牛や沼沢水牛のような在来の家畜は大豆粕などのような蛋白質の補給がない場合でも、粗蛋白質含量が3%程度と低い粗飼料を効率良く消化できる。また、基本的な生体機能を維持するために必要なエネルギー量が低い。そのため、粗蛋白質含量の低い飼料を有効に利用した飼養管理が可能である。
- タイ産ショウガ科食用植物に含まれる抗変異原成分の単離・同定(1998)
熱帯産食用植物の生理機能性について調査を行い、2種類のタイ産ショウガ科食用植物フィンガールート(Bosenbergia pandurata Sch1.) 及びガランガ(Languas galanga)に強い抗変異原性があることを見出し、有効成分を単離し構造を推定した。
- アズキ近縁野生種におけるアズキマメゾウムシ抵抗性系統の発見(1998)
東南アジアに分布するアズキ近縁野生種のアズキマメゾウムシの食害抵抗性を検定したところ、Vigna hirtella と V. trinervia とV. umbellata においてアズキマメゾウムシの食害に対して抵抗性を示す系統が発見された。
- カンキツグリーニング病の抗血清診断法(1997)
り病カンキツ葉の中肋を酵素処理して、し部組織を取る。その組織を磨砕・分画遠心後、最終沈殿をNaCl溶液(中肋重量の40倍濃縮)に懸濁する。この試料1滴を、本病原菌抗血清1滴に滴下する。この微滴法によって、明瞭な陽性診断ができる。
- タイの畑地土壌からの亜酸化窒素発生量の推定(1997)
熱帯にあるタイにおける作物栽培期間中に畑地土壌から発生する亜酸化窒素の施用窒素に対する比は0.08-0.48%であり、温帯と大差がなかった。
- コラップス土の力学的特性の解明と定量化手法の開発(1997)
東北タイに分布する土を対象として、コラップス土の力学的特性を三軸圧縮試験、圧密試験および加圧板試験を行いて明らかにした。また、不飽和土を対象とし、二つのサクション効果を考慮した弾塑性モデルを用いて、コラップス量を定量化する手法を開発した。
- リョクトウの鉄欠乏耐性品種の特性評価(1997)
リョクトウには、鉄欠乏に対する耐性に大きな品種間差があること、および鉄欠乏耐性品種は感受性品種にくらべ高い倍地の酸性化能を持っていることを明らかにした。これらの耐性品種を用いることでアルカリ土壌における鉄欠乏問題を回避できる。
- 東北タイのプラユン地域における塩水地下水の上昇機構の解明(1996)
東北タイの地下60m~150mに分布する岩塩層に由来する塩水地下水の上昇機構を検討した。その結果、断層が塩水地下水の上昇通路として機能していること、、地下水位がデッドラインより低下したときに圧力水頭分布は上向きの地下水流を発生させることを明らかにした。
- タイの作物加害ネコブセンチュウ新種の酵素表現型による同定(1996)
これまで、不明確であったタイの有害ネコブセンチュウの種を明らかにするため、エステラーゼなどの酵素の表現型によって、新種1種を含む5種を同定した。これにより、有害線虫の耕種的防除技術が大きく進展するものと期待される。
- 乾季における乳牛用飼料としてのさとうきびの飼料価値(1996)
タイ国東北部の過酷な環境下で、他の作物・飼料作物と比較しても抜群のバイオマス生産量を誇るさとうきびの乾季における牛用飼料、特に乳牛用飼料としての利用法を、家畜栄養学の見地から示した。
- 東南アジア産有用魚介類の遺伝変異検索マニュアルの作成(1996)
東南アジア産有用魚介類の遺伝変異検索のため、アイソザイム分析マニュアルを作成した。本マニュアルを用い養殖対象種を分析した結果、ナマズでは地域集団が育種素材として重要なこと、また遺伝変異検索が効率的な育種法の選択に有効であることを示した。
- アズキ亜属4倍体種Vigna glabrescensの遺伝的背景(1995)
リョクトウの主要病害虫に抵抗性を示すアズキ亜属4倍体栽培種のVigna glabrescens は、4倍体野生種 V.reflexo-pilosa の栽培型であり、2倍体野生種の V.trinervia (雌親)と V.minima (花粉親)がこれら4倍体種の両親種であると推定された。
- 熱帯における水田からのメタン発生制御技術の開発(1995)
熱帯地域での水田からのメタン発生制御技術を検討した結果、圃場残存有機物の酸化的分解の促進や、有機物肥料の堆肥化など、易分解性有機物量を減少させる有機物管理技術が効果的であることが示された。
- 熱帯における野菜の重要害虫コナガの発生生態(1994)
タイ中部の灌漑地帯のアブラナ科野菜ほ場では、コナガは雨季、乾季ともに高い増殖ポテンシアルを有し、高密度で発生していることを示した。また、コナガの体型は小型で、その年較差がほとんど無いことを明らかにした。
- 東南アジアのマイコプラズマ様病原体のDNA検出法の開発(1993)
東南アジアに発生しているゴマフィロディー、サトウキビ白葉病、イネ黄萎病の病原体であるマイコプラズマ様微生物(MLO)のDNAプローブを作成した。これらを用いることにより、迅速・確実にMLOを検出することが可能になった。
- タイにおけるBradyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性(1993)
これまで分類が困難とされていたBradyrhizobium属の根粒菌をRFLP(制限酵素断片長の多型)分析により、区分することに成功した。リョクトウの場合は主要な3つに、さらにダイズを合わせて分析すると8つのクラスターに仕分けることができ、温帯と熱帯の根粒菌には大きな相違があることを明らかにした。
- タイにおけるトウガラシ及びウリ科野菜ウイルス病の実態解明と耕種的防除法の開発(1993)
タイのトウガラシとウリ科野菜に発生する重要ウイルス病の種類 (チリヴェイナルモットル、キュウリモザイク、パパイヤ輪紋、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス)と性質を明らかにし、抵抗性品種のスクリーニングとともに、スキムミルク及びシルバーマルチ等を用いての耕種的防除法の開発を行った。