タイ国東北部における在来反芻家畜の消化特性とエネルギー要求量

要約

タイ在来種牛沼沢水牛のような在来の家畜は大豆粕などのような蛋白質の補給がない場合でも、粗蛋白質含量が3%程度と低い粗飼料を効率良く消化できる。また、基本的な生体機能を維持するために必要なエネルギー量が低い。そのため、粗蛋白質含量の低い飼料を有効に利用した飼養管理が可能である。

背景・ねらい

   脊薄な土壌が広がる東北タイにおいては有畜農業生産システムの構築が望まれている。その一方で、在来種牛や沼沢水牛の飼養頭数が減少し、稲わらやサトウキビの葉等の粗飼料は十分には利用されていない。現地には養分要求量や消化特性が異なると考えられる数種の反芻家畜が飼養されている。持続可能な家畜生産を行うにはそれぞれの家畜の特性を把握した上で、限りある飼料資源を合理的に利用する必要がある。

成果の内容・特徴

  1. 種子採取後の粗蛋白質含量が3%程度のルジーグラス乾草に大豆粕を段階的に補給する消化試験を緬羊、ブラーマン種牛、沼沢水牛、タイ在来種牛を用いて実施した(図1)。

1)緬羊では粗繊維の消化率が大豆粕の割合が多くなるにつれて高くなり、粗蛋白質含量が10%を越えるとその改善効果が認められなくなる。
2)ブラーマン種牛では大豆粕による蛋白質の補給がない場合、粗繊維の消化率が低いが、飼料中粗蛋白質含量が6.5%を越えると改善効果が認められなくなる。
3)一方、沼沢水牛とタイ在来種牛においては大豆粕添加がなくても粗繊維消化率が高く、蛋白質含量が低い粗飼料でも繊維の消化が効率良くなされるものと考えられる。
4)特に在来種牛では、全体的にその消化率は高い傾向にある。

  1. ブラーマン種牛、沼沢水牛、タイ在来牛それぞれのべ44、27ならびに20頭の去勢雄を用いて実施したエネルギー出納試験における代謝体重当たりの代謝エネルギー摂取量とエネルギー蓄積量の関係から、それぞれの維持のための代謝エネルギー要求量を求めた。ブラーマン種牛、沼沢水牛、タイ在来牛の値は日本飼養標準に示されている黒毛和種の値のそれぞれ、86、76、56%である(図2)。
  2. 以上の結果から、在来の家畜は粗蛋白質含量の低い粗飼料を、蛋白質の補給がなくとも、効率良く消化できる上、維持のためのエネルギー要求量が低く、粗蛋白質含量が低い飼料でも有効に利用できる。

成果の活用面・留意点

  1. 在来の家畜による、現地の飼料資源を活用した持続可能な家畜生産体系の構築に際し活用できる。
  2. 在来家畜の維持に要する要求量は明らかとなったが、生産効率に関する知見はさらに収集する必要がある。

具体的データ

  1.  

    図1 大豆粕補給によるルジー乾草粗繊維消化率の変化の概念図
  2.  

    図2 維持のための代謝エネルギー要求量
所属

国際農研 畜産草地部

分類

研究

国名

タイ

予算区分
国際研究(東北タイ)
研究課題

タイ国東北部における地域飼料資源を利用した大型反芻家畜飼養技術の開発

研究期間

平成6~11年

研究担当者

川島 知之 ( 畜産草地部 )

SUMAMAL Witthaya ( コンケン家畜栄養研究開発センター )

PHOLSEN Pimpaporn ( コンケン家畜栄養研究開発センター )

NARMSILEE Rumphrai ( コンケン家畜栄養研究開発センター )

寺田 文典 ( 畜産試験場 )

発表論文等

Kawashima et al. (1998) Proceedings of the 8th World Conference on Animal Production, Seoul, Korea, Vol. 1, 396-397.

日本語PDF

1999_08_A3_ja.pdf786.74 KB