タイ東北部における在来種育成牛の維持蛋白質要求量

要約

タイ東北部における在来種育成牛維持に要する飼料中粗蛋白質含量は6.1%以下、粗蛋白質摂取量は4.38 gCP/kgBW0.75である。この要求量は、欧米系の肉牛(NRCの維持蛋白質要求量:飼料中含量7.2%、摂取量5.67 gCP/kgBW0.75)に比べ低い値である。

背景・ねらい

熱帯地域のタイでは現在、牛の飼料給与に関しては寒地に適応した牛の蛋白質出納データによって作成されたNRC飼養標準等が利用されている。しかし、東南アジア等の熱帯地域では、寒地に適した欧米系肉牛とは異なる体格や生理機能を有し、暑熱環境に適したゼブ系肉牛が主に飼養されている。また、飼料も熱帯地域特有のものが多い。しかし、これらを実際に組み合わせて、家畜の蛋白質出納を測定したデータは殆ど無い。そこで、タイ東北部在来種育成牛を用いて蛋白質出納試験を実施し、その出納量から維持要求量を算出した。

成果の内容・特徴

  1. 在来種育成雌牛4頭(平均体重132±11.7 kg)に稲ワラと乾燥キャッサバを主体に大豆粕によって蛋白質含量を調整した粗蛋白質含量(6.1%, 9.4%, 12.1%, 15.4%)が異なる飼料を給与すると、6.1%含有飼料でも体重の減少は認められず蛋白質出納は正の値を示す。タイ東北部における在来種育成牛の維持に要する飼料中粗蛋白質含量は、6.1%未満である(表1)。
  2. 在来種育成雄牛16頭(平均体重:105±9.3 kg)に暖地型イネ科牧草のムラトウⅡ乾草を粗飼料源として大豆粕によって蛋白質含量を調整した粗蛋白質含量(5.3、7.1、8.3、9.8%)が異なる飼料を給与すると、蛋白質蓄積量は粗蛋白質含量5.3%含有飼料では負の値を示し、他の飼料では正の値を示す。タイ東北部における在来種育成牛の維持に要する飼料中粗蛋白質含量は、5.3~7.1%の間である。また、粗蛋白質摂取量と蓄積量との関係から維持に要する粗蛋白質摂取量は、4.38gCP/kgBW0.75である(図1)。

成果の活用面・留意点

  1. タイ在来種育成牛に対する飼料配合ならびに給与量の計算に維持に要する蛋白質要求量として応用でき、熱帯地域の飼料資源を効率的に利用できる。
  2. 肉牛飼養標準作成の基礎数値として活用できる。
  3. 熱帯在来種牛は地域による多様性が大きく、また飼育環境によっても飼養成績が大きく異なる可能性がある。よって、異なる地域で本要求量を用いて飼料設計した場合は、その整合性を確かめる必要がある。

具体的データ

  1. 表1.タイ東北部における在来種育成牛の飼料中粗蛋白質含量と粗蛋白質蓄積量との関係

    表1.タイ東北部における在来種育成牛の飼料中粗蛋白質含量と粗蛋白質蓄積量との関係
  2.  

    図1.タイ東北部における在来種育成牛の粗蛋白質摂取量と粗蛋白質蓄積量との関係
    図1.タイ東北部における在来種育成牛の粗蛋白質摂取量と粗蛋白質蓄積量との関係
所属

国際農研 畜産草地領域

分類

研究

国名

タイ

予算区分
交付金〔熱帯畜産〕
研究課題

インドシナ半島における肉用牛飼養標準ならびに飼料資源データベースの構築

研究期間

2008年度(2006~2011年度)

研究担当者

大塚 ( 畜産草地領域 )

THUMMASAENG Kungwan ( ウボンラチャタニー大学 )

CHANTIRATIKUL Annut ( マハサラカン大学 )

ほか
発表論文等

Chumpawadee, S., Chantiratikul, A., Rattanaphun, V., Presert, C. and Kookaew, K. (2009) Effect of dietary crude protein levels on nutrient digestibility, rumen fermentation and growth rate in Thai-indigenous yearling heifers. J. Anim. Vet, Adv. 8(2), 297-300.

Chantiratikul, A..and Chumpawadee, S. (2009) Protein requirement of yearling female Thai-indigenous cattle. JIRCAS Working Report 64, 48-50.

Senarath, S. et al. (2009) Protein requirement for maintenance of yearling Thai native cattle. JIRCAS Working Report 64, 83-86.

日本語PDF

2008_seikajouhou_A4_ja_Part16.pdf474.8 KB