研究成果情報 - タイ
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
- 食品中のγ―アミノ酪酸(GABA)の簡易迅速定量法の開発(2007)
γ―アミノ酪酸(GABA)アミノ基転移酵素の作用を活用し、96穴マイクロプレートを利用して測定できるGABAの簡易迅速定量法を開発した。本法を用いることにより多検体の食品中のGABA含量を短時間かつ低コストで測定できる。
- タイ北部の伝統大豆発酵食品トゥア・ナオから分離される納豆菌の遺伝資源としての有用性(2007)
タイ北部の大豆発酵食品トゥア・ナオ(Thua Nao)から分離される納豆菌(Bacillus subtilis (natto))は、日本の納豆製造用菌株と比べて遺伝的多様性に富み、アミラーゼ活性、ズブチリシンNAT活性、粘物質生産能などが顕著に高い菌株が見出される。
- 低投資・環境共生型ウシエビ・海藻混合養殖技術の開発(2007)
東南アジア諸国に多い小規模・零細エビ養殖業者も適用可能な低投資で環境負荷の少ない、安定したウシエビ養殖技術の開発を目指し、数種の海藻類との混合養殖実験を行った。シオグサ科植物およびクビレズタとの混合養殖は、エビの投餌量や養殖池環境維持費の削減を可能にし、従来の養殖法よりも生産効率を向上させた。
- アジア開発途上地域の農業技術開発目標の重要度(2006)
アジア開発途上地域の農業研究者、普及職員及び農家の間には、農業技術の開発目標の重要度や、技術開発目標の達成により期待される効果の認識に差がある。特に農業経営・技術普及に関する研究については、貧困解消への寄与が農家から期待されており、この分野の研究成果を農業技術政策へ反映させる努力が、研究開発への信頼醸成のために重要である。
- タイ東北部における在来種去勢牛の維持エネルギー要求量(2006)
タイ東北部における在来種去勢牛の維持に要する代謝エネルギー要求量は, 477 kJ/kgBW0.75である。これらは日本飼養標準における黒毛和種去勢牛の維持に要する代謝エネルギー要求量の470 kJ/kgBW0.75とほぼ同様の値である。
- キャッサバパルプを用いた効率的な燃料エタノール生産技術の開発(2006)
アルコール発酵用実用酵母の細胞表層にアミラーゼを提示させたアーミング酵母を開発し、この酵母を用いてキャッサバデンプン産業副生物のキャッサバパルプを原料としてエタノール生産を行ったところ、キャッサバパルプの主成分であるデンプンの分解と発酵が同時に進行し効率的にエタノールが生産された。
- タイの市販オオバンガジュツにおける機能性ポリフェノール含量の季節変化(2006)
タイ国内の市場を流通するオオバンガジュツでは、主要な4つの機能性ポリフェノール成分の含量に一定の季節変化が観察される。その主な原因は、土中保留中におけるポリフェノール成分ごとの一定方向への含量の増減である。
- タイ国コンケン県における農業生産に関わる窒素循環の1990年から2000年への変化(2005)
東北タイのコンケン県における窒素循環の1990年と2000年の比較を行ったところ、農地における窒素収支は-23 kgN/haの収奪から+10 kgN/haの蓄積に変化した。これは、化学肥料施用量と作物残渣還元量の増加によるものである。一方、家畜糞尿投入量が減少しており、有機物よりも化学肥料により、農業生産が支えられる変化が起きている。
- サイレージ用乳酸菌PS1-3株の実用化とその発酵品質改善効果(2005)
タイ国内のサイレージから分離・選抜した乳酸菌PS1-3株を実用化するため、安価な大量培養法を考案して乾燥菌体顆粒を調製した。また、適正添加量を安価に確保するため、この顆粒からの簡易な生菌数増殖法を考案した。この増殖菌体を添加して調製したサイレージの発酵品質は顕著に改善された。
- タイ東北部におけるサトウキビサイレージの肉牛用飼料としての利用(2005)
タイ東北部においてサトウキビ(株出し6ヵ月)サイレージの可消化養分総量は49.6%(乾物あたり)であり、本サイレージと本地域の飼料資源を用いることにより、肉牛生産ができる。一般的な暖地型牧草に比べ生産性が高くサイレージ適性に優れることから、肉牛飼養規模の拡大ができる。
- ヒハツモドキの成分ピペリンによる貯蔵穀物害虫の発育阻害(2005)
ヒハツモドキ(Piper retrofractum)など多くのコショウ属植物に含まれるピペリンはコクゾウムシ、ココクゾウムシ及びコクヌストモドキの発育を阻害する。
- 生態系機能を利用した持続可能な循環型養殖システムモデル(2005)
持続可能なエビ養殖に果たす底生生物の役割を明らかにするとともに、生態系の生産機能と浄化機能を利用した環境にやさしい循環型養殖システムのモデルを開発した。
- ウシエビと海ぶどうの複合養殖(2005)
汽水産エビ類の低投資で持続的な複合養殖技術の開発を目指し、ウシエビ(Penaeus monodon)と食用緑藻類のひとつである海ぶどう(クビレズタ:Caulerpa lentillifera)の混合飼育を行った。海ぶどうは高い水質浄化能力(溶存栄養塩吸収能力および物理ろ過能力)を持つばかりでなく、エビ鰓への付着生菌数を減少させ、飼育水中の生菌数を安定させ、エビ類に隠れ家を提供した。加えて、海ぶどうは高い成長率を示し、施肥を必要としなかった。
- 東北タイ農村における所得増加に対する農民意識と情報入手手段(2004)
家族内を中心とする限定的な情報入手手段への依存が強い農村では、自家内での個別的経営努力に対する評価が高いのに対し、農民グループによる主体的情報収集手段を持つ農村では、技術に対する評価・期待が高い。
- 東北タイ・天水農業地域における水文立地解析モデルの開発(2004)
東北タイ・コンケン周辺地域を対象に、日雨量を入力データとして小流域の水文過程を再現するシミュレーションモデルを構築した。このモデルに米収量推定モデルを結合することによって、流域内における面的な米収量の推定が可能である。
- 東北タイにおける臭素を用いた不飽和帯での土壌水の追跡(2004)
地表に散布した臭素を100mLコアと遠心分離器を用いて回収し、その濃度分布から土壌水を 追跡する方法を東北タイの試験地に適用し、土壌面蒸発量や降水の浸透量を解析した。
- 地表水のラドン濃度測定のための簡便な濃縮装置の開発と応用(2004)
途上国でも設置可能な濃縮装置により、地表水のラドン濃度を容易に測定することができ、地下水の湧出地点の特定などに応用できる。
- シトロネラオイルによるコクゾウムシ及びカビの防除(2004)
熱帯のイネ科植物シトロネラグラス(Cymbopogon nardus)の精油に含まれるテルペン類はコクゾウムシ及びカビの発生を抑制し、穀物貯蔵に利用できる。
- 熱帯のサイレージ醗酵に適した優良乳酸菌(2003)
タイ国で良質サイレージを調製するための乳酸菌を熱帯対応型改良パウチ法を用いて検索し、高温(45 °C)下に速やかに増殖して多量の乳酸を生成する優良乳酸菌株を分離した。分離株は少ない菌接種量でも共存する酵母やコリ型細菌の影響をあまり受けず、接種量を増やすと乳酸量が増大し、共存他種微生物の生菌数を低下させた。
- 貯蔵食品害虫の天敵、ホウネンカメムシ(Joppeicus pradoxus)の捕食生態(2003)
捕食性カメムシの一種であるホウネンカメムシ(Joppeicus pradoxus)は、コクヌストモドキ等の貯穀害虫の捕食量が大きく、貯穀害虫の天敵として有望である。