リョクトウの鉄欠乏耐性品種の特性評価
リョクトウには、鉄欠乏に対する耐性に大きな品種間差があること、および鉄欠乏耐性品種は感受性品種にくらべ高い倍地の酸性化能を持っていることを明らかにした。これらの耐性品種を用いることでアルカリ土壌における鉄欠乏問題を回避できる。
背景・ねらい
熱帯・亜熱帯地域には、半乾燥地を中心に広くアルカリ土壌が分布している。アルカリ土壌では、土壌中の鉄の溶解度が低く作物の鉄欠乏により生産が著しく阻害される。そこで、鉄欠乏に対する作物の耐性の品種間差を利用し、鉄欠乏問題を解決する必要がある。本研究では、熱帯アジアで広く栽培されているリョクトウ品種の、鉄欠乏に対する耐性を評価するとともに、その生理的メカニズムを明らかにした。
成果の内容・特徴
- 試験を行ったタイ国ナコンサワン畑作センターの土壌の性質は、pH7.7(H2O)、有効態鉄(DTPA法)3.2mg kg-1、炭酸カルシウム含量530Kg-1であり、鉄が欠乏した石灰質アルカリ土壌であった。
- リョクトウの10品種/系統を上記の圃場で栽培し、クロロシスの発生および収量から鉄欠乏に対する耐性を評価したところ、大きな品種間差異が認められた(図1、表1)。これらの鉄欠乏に対する強耐性品種を用いることにより、アルカリ土壌における鉄欠乏問題を回避することができる。
- 感受性品種で発生したクロロシスは5gL-1の硫酸第一鉄の葉面散布により回復した。さらに生育期間中5回の葉面散布により、感受性品種であるKPS2の収量が約3倍に増加した(表1)。
- 耐性品種は、水耕倍地の鉄欠如処理に反応して水耕倍地のpHを大きく低下させが、感受性品種ではこのような倍地のpHの変動はみられなかった(図2)。したがって、リョクトウの鉄欠乏耐性の主な生理的メカニズムは、根による倍地の酸性化である。
成果の活用面・留意点
- アルカリ土壌が分布する国では、リョクトウ育種における選抜段階で鉄欠乏に対する耐性を評価する必要がある。
- 鉄は植物体中を移動しにくいため、葉面散布は生育初期から継続的に行う必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
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タイ農業局
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
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リョクトウ遺伝資源の鉄欠乏耐性の評価
- 研究期間
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平成6~9年
- 研究担当者
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大脇 良成 ( 沖縄支所 )
江川 宜伸 ( 沖縄支所 )
菅原 和夫 ( 沖縄支所 )
KRAOKAW Sanayh ( タイ農業局 )
CHOTECHUEM Somsong ( タイ農業局チャイナート畑作物研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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Ohwaki, Y., Kraokaw, S., Chotechuen, S. and Egawa, Y. (1996) Physiological characteristics of mungbean varieties resistnant to iron‐deficient soils. JIRCS working report No2, 60‐66.
Mungbean Germpasm : Collection, Evaluation and Utilization for Breeding Program
Ohwaki, Y., Kraokaw, S., Chotechuen, S., Egawa, Y. and Sugahara, K. (1997) Differences in responses to iron deficiency among various cultivars of mungbean (Vigna radiata (L.) Wilczek). Plant and Soil, 192, 107‐114.
- 日本語PDF
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1997_16_A3_ja.pdf1.16 MB