タイにおけるBradyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性

国名
タイ
要約

これまで分類が困難とされていたBradyrhizobium属の根粒菌をRFLP(制限酵素断片長の多型)分析により、区分することに成功した。リョクトウの場合は主要な3つに、さらにダイズを合わせて分析すると8つのクラスターに仕分けることができ、温帯と熱帯の根粒菌には大きな相違があることを明らかにした。

背景・ねらい

マメ科作物のリョクトウは、共生窒素固定を行い地力を維持することができ、生育期間が短く様々な作付体系に導入し易いため、アジアで広く栽培されている。しかし、熱帯地域におけるリョクトウの生産性は未だ低いレベルに停滞している。そこで、これまでほとんど調べられていないリョクトウ根粒菌を遺伝子工学的手法によって分類し、これまでに熱帯や温帯の土壌から分離された根粒菌との遺伝的類縁関係を検討した。

成果の内容・特徴

  1. タイのリョクトウから分離したBradyrhizobium属根粒菌のDNAを抽出し、ダイズ根粒菌の根粒形成遺伝子をプローブとしたRFLP(制限酵素の断片長の多型)分析を行った。検出された多型から各菌株間の類似度を算出し、クラスター分析により系統樹を作成したところ、3つの主要なクラスターが形成された(図)。クラスター1に属する根粒菌はタイ各地に広く分布していた。また、タイ国農業局根粒菌センターに優良株として保存されていたリョクトウ根粒菌はクラスター2に属する根粒菌であった。
  2. タイのダイズ根粒菌とリョクトウ根粒菌とから出現したRFLPパターンをあわせてクラスター分析したところ、8つのクラスターに分類された(表)。日本やアメリカから分離されたダイズ根粒菌において最も多く分離されるクラスター5に属する根粒菌(B. japonicum)は、タイにはほとんどいないと考えられた。タイのダイズ根粒菌では数多く出現したクラスター7の根粒菌(B. elkanii)は、リョクトウ根粒菌ではほとんど分離されなかった。クラスター1と2は、タイのダイズ根粒菌とリョクトウ根粒菌とに共通して出現した。
  3. クラスター2に属する根粒菌について接種試験を行ったところ、ダイズとリョクトウの両方に根粒を形成する広宿主域の根粒菌が出現した(写真)。

成果の活用面・留意点

ダイズやリョクトウの根粒菌を遺伝的解析により正確に分類でき、根粒菌の菌学的位置づけを明らかにするとともに現場での有効根粒菌の分類に活用できる。

具体的データ

  1. 図
  2. 表
  3. 写真
Affiliation

国際農研 環境資源部

分類

研究

予算区分
経常
研究課題

タイにおけるBradyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性

研究期間

1993年度(1991~1993年度)

研究担当者

安藤 象太郎 ( 環境資源部 )

友岡 憲彦 ( 農業生物資源研究所 )

村上 敏文 ( 企画調整部 )

横山 ( 農業生物資源研究所 )

ほか
発表論文等

安藤 他. (1994) 熱帯のBradyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性. IGEシリーズ, 19, 東北大学遺伝生態研究センター編.

日本語PDF

1993_06_A3_ja.pdf779.22 KB

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