アズキ近縁野生種におけるアズキマメゾウムシ抵抗性系統の発見
東南アジアに分布するアズキ近縁野生種のアズキマメゾウムシの食害抵抗性を検定したところ、Vigna hirtella と V. trinervia とV. umbellata においてアズキマメゾウムシの食害に対して抵抗性を示す系統が発見された。
背景・ねらい
アズキマメゾウムシCallosobruchus chinensis (L.) (写真1)は汎世界的に分布し、アズキ、リョクトウ、ササゲなどの種子を食害する。リョクトウ野生種の1系統Vigna radiata var. sublobata (TC1966)はアズキマメゾウムシの食害に対する抵抗性因子を持ち、それは単一の優性遺伝子に支配されていることが知られている。しかしながら、TC1966はアズキおよびその近縁野生種との問に交雑親和性が無いため、TC1966のアズキマメゾウムシの食害に対する抵抗性因子を交雑育種でアズキおよびその近縁野生種に導入することができない。そこで今回は、アズキ近縁野生種の中からアズキマメゾウムシの食害に対する抵抗性に関する因子を保有する系統を発見する目的で、東南アジアから収集した系統のアズキマメゾウムシの食害に対する抵抗性を比較した。
成果の内容・特徴
- タイ産Vigna hirtella 1系統ととマレーシア産V. trinervia 3系統とタイ産V. umbellata1系統が、アズキマメゾウムシの食害に対する抵抗性を示した。
- V. hirtella、V. trinervia、V. umbellataのいずれも、Vigna 属の中でもアズキ近縁の種群に属し、すでにアズキマメゾウムシの食害に対する抵抗性因子を持つことが知られているリョクトウ近縁種群に属するVigna radiata var. sublobata (TC1966)よりも栽培アズキに近縁である。
- V. hirtella は、栽培アズキと交雑可能であるので、栽培アズキに抵抗性を導入できる可能性が高い。
- V. umbellata は、栽培アズキと交雑親和性が認められない。しかし、V. minima は、両種と交雑可能であるので、をV. minima 橋渡し植物として抵抗性をV. umbellata からアズキに導入できる可能性は高い。(図1)
成果の活用面・留意点
- これらはアズキマメゾウムシの食害に対する抵抗性因子を栽培アズキヘ導入するための有用な遺伝資源として期待できる。
- V. trinerviaと栽培アズキとの間に交雑親和性が認められていないので、交雑育種で抵抗性因子を栽培アズキに導入しようとした場合、共通に交雑親和性を有する系統を探索する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
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東南アジアに分布するアズキ近縁野生種の遺伝的多様性
- 研究期間
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平成10年度(平成4~13年)
- 研究担当者
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河野 勝行 ( 沖縄支所 )
江川 宜伸 ( 沖縄支所 )
高橋 敬一 ( 沖縄支所 )
- ほか
- 発表論文等
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河野勝行・江川宜伸・高橋敬一・友岡憲彦・Ithnin Bujang (1998) 東南アジアに分布するアズキ近縁野生種のアズキマメゾウムシ抵抗性. 熱帯農業, 42(別2): 73-74.
江川宜伸・友岡憲彦・藤井宏一 (1998) アズキ近縁野生種Vigna minima var. minor の沖縄県石垣島における分布とアズキマメゾウムシ抵抗性. 熱帯農業, 42(別2): 71-72.
- 日本語PDF
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1998_18_A3_ja.pdf928.69 KB