研究成果情報 - マレーシア

国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。

各年度の国際農林水産業研究成果情報

  • フタバガキ科樹種Shorea leprosulaの成長特性の地域個体群間差(2022)

    異なる産地の個体を共通の環境で栽培して特性を評価するコモンガーデン試験により、東南アジア地域の有力な林業樹種の一つであるShorea leprosulaの伸長成長とカイガラムシ耐性の地域個体群間差が検出できる。得られる知見は、S. leprosulaの植栽木としての優良個体を探索する際の手がかりとなる。

  • 葉脈の構造は熱帯林樹木の葉の丈夫さと光合成能力に関係している(2022)

    熱帯林樹木の葉脈構造は、葉を光に透かせば判別でき、その構造は葉の丈夫さと光合成能力に関係している。葉を光に透かした際に、葉脈網が明瞭な樹木は葉が丈夫で明るい環境で光合成が高く、不明瞭な樹木は暗い環境での光合成に有利であったことから、葉脈構造は、樹木の機能的特性の簡便な指標としての利用が期待される。

  • 東南アジア熱帯雨林で重要な林業樹種におけるゲノム選抜育種導入の可能性(2020)

    東南アジア熱帯雨林の重要な林業樹種(フタバガキ科樹種)を対象に遺伝子連関解析を行い、ゲノム推定モデルを構築することで、形質の評価に長期間を要していた林木の遺伝的な改良期間を短縮できる。とくに、成長に関して、連関するDNA多型と高いゲノム遺伝率が検出されたことから、成長に関するゲノム選抜が有効であることが示唆される。

  • 温度のわずかな変化がフタバガキ科林業樹種の葉の生産のタイミングを制御する(2020)

    東南アジア熱帯地域のフタバガキ科林業樹種の苗木では、わずかな温度変化に樹木が敏感に応答し、葉の生産量を増減させる。気温の異なる複数の地域に苗畑を設置し、成長の異なる苗木を利用できるようにすることで、適正サイズの植栽用苗木の安定生産が期待できる。

  • ハイガイ養殖漁場管理のための簡便な生物指標の開発(2020)

    東南アジアで生産量が激減しているハイガイの養殖漁場を適切に管理するため、二枚貝の成育状態の指標である丸型指数及び肥満度をハイガイに活用できるよう改善し、ハイガイの成育状態及び漁場環境を簡便に評価するとともに、養殖漁場を管理するための科学的根拠を提案する。

  • オイルパーム古⽊中の遊離糖及びデンプン量を決定する要因を同定(2019)

    オイルパーム古木中の遊離糖及びデンプン蓄積量の季節変動は積算温度に最も強く調節されている。気温と降水量を観測することでバイオマス資源として利用するオイルパーム古木の伐採適期が把握できる。

  • Bacillus aryabhattai は農作物残渣内の澱粉からバイオプラスチックを⽣産する(2019)

    日本の土壌から新たに単離した細菌Bacillus aryabhattaiはアミラーゼ遺伝子(amyA)を保有し、菌体外に分泌した澱粉分解酵素(アミラーゼ)による澱粉分解によってグルコース生産してポリヒドロキシ酪酸(PHB)を体内に蓄積する。

  • 健全な種子生産を維持するためのフタバガキ科林業樹種の択伐基準の改善(2016)

    フタバガキ科4林業樹種について、種子の父性解析から得られた花粉散布・開花量のパラメータを用い、択伐後の他家受粉の減少量をシミュレーションにより推定した。その結果によれば、材密度が高い非早生樹種では他家受粉が大きく減少し健全な交配が維持できないため、択伐の伐採基準を現行よりも厳しくすることが望ましい。

  • アセアン国別食料需給モデル作成・運用マニュアルによる成果の普及(2016)

    アセアン加盟各国を対象として食料生産・消費の中期予測を行うための非均衡モデルを作成・運用するためのマニュアルを作成し広く公表する。マニュアルは、モデルの作成法を基礎的な計量経済学の概念と共に示し、モデルの理解・作成・運用に寄与する。

  • マレーシア半島地区における林業種苗配布区域の設定手法(2014)

    東南アジア熱帯雨林において林業用種苗の地域間移動に制限が設けられていない。そこで、マレー半島に分布する林業樹種の遺伝的変異のパターンを明らかにし、科学的根拠に基づいた地域間の遺伝的な違いを考慮した林業種苗配布区域を設定する手法を提示する。

  • オイルパームからプラスチック原料に有望なp-ヒドロキシ安息香酸を抽出する(2014)

    オイルパームから亜臨界水抽出によってプラスチック原料に有望なp-ヒドロキシ安息香酸等の低分子量フェノール性物質を抽出する最適条件と部位別の収率を示す。種子殻や葉柄はp-ヒドロキシ安息香酸の抽出原料として評価できる。

  • マレーシアにおけるハイガイ養殖の生産阻害要因(2014)

    近年マレーシア半島西岸のハイガイ漁場で顕在化している、稚貝発生量の減少および養殖過程での大量死の要因を把握する。稚貝発生量減少は、過度の有機物負荷に伴う還元的環境が貝の性成熟不良を招いたことが原因であると考えられる。一方、大量死は、大量出水に伴う環境変化が貝の摂餌不良・栄養吸収阻害を引き起こしたことによる衰弱が主因であると判断される。

  • オイルパーム幹からのバインダーレスパーティクルボードや圧縮板の製造(2013)

    未利用であるオイルパーム幹を用い、原料粉末のみの熱圧締によるバインダーレスパーティクルボードや圧力と熱をかけて密度を高めた圧縮板が製造できる。実用化されれば、新規原料が天然林資源の代替となり、既存産業を衰退させず天然林を保護することへ貢献する。

  • 飛翔力の強い甲虫媒のフタバガキ科樹種が健全に種子生産できる択伐基準(2013)

    JIRCASが開発した繁殖モデルを適用し、現地でバラウと呼ばれ低地フタバガキ林に生息する飛翔力の強い甲虫媒の有用樹について、熱帯樹木の択伐基準を考慮する際に重要な自然交配が可能になる花粉散布パターンを決定した。飛翔力の弱いアザミウマ媒の有用樹レッドメランティよりも送粉効率が高く、択伐基準はレッドメランティよりも緩和できる。

  • マレーシア半島セランゴール沿岸における麻痺性貝毒原因プランクトンの発見(2012)

    麻痺性貝毒はヒトに重篤な食中毒被害をおよぼし、その予察防除は食品安全上の重要な課題である。貝を毒化させるプランクトンを調査したところ、ハイガイ養殖の中心漁場で、その原因プランクトン2種の遊泳細胞および1種の休眠胞子の分布が初めて明らかになる。今後、ハイガイ養殖の安定化に向けて、同漁場での貝毒モニタリング体制の確立が必要である。

  • 健全種子を生産し更新を確保するための熱帯有用樹種セラヤの繁殖特性(2011)

    マレーシアの丘陵フタバガキ林の優占種で主要な林業樹種であるセラヤについて、一斉開花時に遺伝子解析によって種子の父親を決定した。繁殖モデルを開発して同樹種の花粉散布距離の短さおよび小径木の花粉生産性の低さを明らかにした。これらをもとに健全な交配により生存力の高い種子を確保し更新を維持するための択伐技術を提案した。

  • 広大なマングローブ域は回遊する有用魚類幼魚の餌場として重要な役割を果たしている(2011)

    フエダイ類の幼魚はマングローブ沿岸域に加入し,成長とともにマングローブ域で生産される餌料への依存を強める。一方、コニベ類幼魚ではマングローブ奥部から沿岸域に移動する。大規模なマングローブ域における餌料の供給と複雑な水路の広がりが水産有用魚類の再生産にとって非常に重要である。

  • 熱帯汽水域の最重要養殖魚チャイロマルハタ幼魚の資源評価および漁獲管理(2011)

    熱帯において最重要養殖魚のチャイロマルハタは、汽水域に生息する幼魚を種苗として漁獲している。漁獲実態および生物学的解析により同魚の現状は乱獲傾向にあること、漁獲努力量を減らすことで資源管理効果を飛躍的に高めることが明らかとなった。

  • 効率的なエタノール生産を目的としたオイルパーム廃棄木からの柔組織分別調製装置(2010)

    オイルパーム廃棄木から効率的にエタノールを生産するため、樹液搾汁後の残渣から柔組織を分別する装置を開発する。本システムは、パドルを有するスクリューコンベアとサイクロン方式の分別機により構成され、搾汁残渣より柔組織を純度85%以上、回収率80%以上で分別することができる。

  • 半島マレーシア丘陵フタバガキ林における優占種Shorea curtisii の択伐指針(2010)

    丘陵フタバガキ林における優占種Shorea curtisii稚樹の密度は、母樹からの距離が近いほど、また周囲から突出した尾根的な場所ほど高いことが示され、稚樹の分布が母樹の周囲に限定されることから、択伐施業においては50 m程度の間隔で母樹を保残するべきである。