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225. 世界および地域レベルでの土地利用変化をもたらす要因

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人類による土地利用は、エコシステムを改変し、生物多様性を劣化させ、炭素・窒素サイクルを攪乱させ、大気に温室効果ガス(GHG)を排出してきました。しかし、化石燃料由来の二酸化炭素排出とは対照的に、土地利用からのGHG排出のトレンドと原因について要素分解し、包括的かつ体系的に分析は殆ど行われてきませんでした。

2021年1月、Nature誌にて、1961年~2017年の期間における土地利用からのGHG排出トレンドについて、不確実性を考慮しながら人口・経済・技術的な原因別に分析を行った論文が発表されました。 この期間、世界的には、人口の増加(+144%)と一人当たり農業生産の増加(+58%)、土地単位当たりGHG排出の微増(+8%)に対し、単位当たり農業生産に必要とされる土地は縮小を続け(-70%)、2001年までに土地利用変化に伴うGHG排出はCO2換算で11ギガトン程度でほぼ一定の値を維持してきました。しかし2001年以降、土地当たりGHG排出の増加によって、10年ごとにCO2換算で2.4ギガトン上昇、2017年にはGHG排出は14.6ギガトンに達し、人為的なGHG排出の約25%程度を占めるようになりました。

この論文の結果は、土地利用全体のGHG排出トレンドに関する既知の情報に加え、地域・セクターごとの土地利用変化トレンドに次のような洞察を与えます。(1)土地利用変化を通じた排出が重要かつ上昇傾向にある地域(ラテンアメリカ、サブサハラアフリカ、東南アジア);(2)土地利用変化からの排出は小さいものの農業部門の排出は増加している国々(東アジア、南アジア、中東);(3)土地利用変化による排出はしばしマイナスだが農業部門の排出は一定かつ大きい先進国地域(北米、欧州、オセアニア)。

今後も途上国地域を中心に人口増や都市化・経済成長による食料需要の質・量的変化が予測される中、各地域・各国の事情に応じた農業生産技術・慣行の変革なしに、GHG排出を削減することは困難です。国際農研は、開発途上国における気候変動対策に貢献し、土地利用変化の拡大を最小限にしながら農業生産を維持するための技術開発を行っています。その戦略的な分野として、サブサハラアフリカなど農業低生産性の問題を抱える地域における収量向上を通じて土地利用変化を最小限にするための持続的農業集約化技術、東南アジアなどでの水田からのメタン排出削減慣行、ブラキアリア牧草やソルガムなど生物が本来持つ窒素肥料利用能力の効率性向上、といった技術開発があげられます。


参考文献

Chaopeng Hong et al, Global and regional drivers of land-use emissions in 1961–2017, Nature (2021). DOI: 10.1038/s41586-020-03138-y

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)