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216. 市場アクセスと食の多様性

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栄養不足人口のかなりの割合を占めているのが、低中所得国の小規模農民です。また、バラエティに富んだ食事をとること(食の多様性)は、必要な栄養素をバランスよく十分に摂取するために重要です。農家は自分で作物を栽培しているため、栽培する作物の多様性がその農家の食の多様性に直接つながるのではと考える向きもあります。しかし最近の研究では、低中所得国の農家であっても、市場アクセスの改善が食の多様性に与える影響は無視できないと考えられています。

今回は、今月Global Food Security誌でオンラインで公開されたシステマティックレビュー論文をご紹介します。

論文は、市場アクセス、食事、栄養に関する786の記事をスクリーニングし、低中所得国14か国における28のオリジナル研究を特定し、市場へのアクセスと食の多様性との関連を調べました。ほとんどの研究は、市場へのアクセスと食事の多様性との間に一貫した正の関連性を示しました。もちろん栽培作物の多様性を否定するものではありませんが、栽培作物の数が少なかったとしても市場で補完できる可能性を示唆しています。

とはいえ、調査結果はアフリカとアジアの国で、現地のコンテキストに固有のものです。リソースへのアクセス、技術、栄養知識、生産などの他の要因にも左右されます。現場に即した観点、適切な指標の開発、市場機能とガバナンス、農業生態学や気候変動や季節性の考慮、食文化、など、まださらなる研究が必要な課題が多くあるようです。

市場アクセスの改善が農家の食事の質を改善するための効果的な経路であると結論付けるには、さらなる研究が必要です。 

国際農研では、アフリカやアジアにおける農村世帯の食事に関する家計調査を通じ、農家の栄養に影響を与えるチャネルについて分析を行い、作物栽培技術の開発にとどまらず、農業システムの改善に繋がる技術開発・政策提言のための研究を行っています。


参考文献

Nandi R., Nedumaran, S., and Ravula P. (2021) “The interplay between food market access and farm household dietary diversity in low and middle income countries: A systematic review of literature.” Global Food Security  https://doi.org/10.1016/j.gfs.2020.100484
accessed on Jan 18, 2021.

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)