Pick Up

161. フードシステム再構築のためのアクション

関連プログラム
情報収集分析

 

国際農業研究機関ネットワークであるCGIARの気候変動・農業・食料安全保障研究プログラム(CGIAR Research Program on Climate Change, Agriculture and Food Security: CCAFS)は、Global Food Security誌にて、「見解論文:フードシステム再構築のためのアクション」を公表しました。

人為的な気候変動の脅威にさらされる中、現在のフードシステムは、2030年までに持続可能な開発目標を達成するための持続的な軌道から逸れているという見解が広く共有されています。CCAFSチームは、より持続的、包括的、健康で気候変動に強靭なフードシステムへの転換のために、古いシステムを新たな軌道に乗せること、リスクを削減すること、フードシステムの環境フットプリントを最小化すること、新たなフードシステムが機能するための政策を整備すること、が必要であるとしました。

フードシステムを再構築する上での最大の挑戦の一つに、農家・農業システムの多様性があげられます。農家を類型化して一般論を当てはめることは非常に困難であり、全ての状況において望ましいインパクトをもたらす万能薬は未だに確認されていません。経済・社会・文化・環境的利益について、現在の世代だけでなく将来の農家の希望も織り込みつつ、介入設計に配慮する必要があります。適切なターゲティングを行うことが農業開発過程の効率性を向上し、特定の脆弱な社会層を無意識のうちに排除してしまう事態を回避することができます。

多くの農家タイプが存在しますが、CCAFSチームは、将来のフードシステムを環境的・社会文化的・経済的に持続的なものへと転換するために必要とされる介入・制度・政策の違いによって、次の4タイプに分類することができそうです。

•             まず、大規模商業農家。おそらく世界的に7000万農家が存在しますが、とりわけ環境目標の向上に注力すべきです。

•             世界的に約3.2億程存在する0.5ha以下の圃場を保有する小規模農家については、ローカル市場との統合向上を目指し、その過程でデジタル情報や意思決定ツールへの支援を行うとよいでしょう、

•             遊牧民や農牧民などの粗放的農家(約3000万)の多くが気候リスクの極めて高い環境に暮らしており、生産性と強靭性を高めるための資産増強やセイフティネットの活用が望まれます。

•             最後に、都市やニッチ市場(オーガニック、放し飼い)を対象とした農家やギリギリの状態にある約1.5億の資源に恵まれない小規模農家に対しては、農村経済の再活性化や都市・都市郊外での経済機会を提供することで、農業参入を支援すると同時に、農業以外の生業戦略に従事するために農業から撤退する選択肢もあるとよいでしょう。

CCAFSチームは、再構築を可能にするために必要なアクションとして次を挙げています。第一に、農家にとって実現可能で包括的な変化の軌道について理解を深めることにあります。第二に、資金調達です。2020年の2月中旬から3月中旬の期間に、COVID-19パンデミック対応のために世界的に8兆ドルの財政対策が発表されました。これは極めて深刻な脅威に直面した際の協調の可能性を示しています。フードシステム構築に必要な資金は2030年までに2-3兆ドルと推計されています。第三に、これまで以上に、変化のための連携する意思が必要であるということです。我々の世界において、生産者は一部にすぎませんが、その他全てが消費者です。現在直面する危機は、フードシステムにおいても緊急の対応が必要であるという教訓を与えてくれています。

国際農研は、開発途上国地域の現場において、小規模農民を対象とした気候変動緩和・適応策の技術開発にも関わっていますが、その際に、農学研究者だけでなく、社会科学研究者も交え、農民に受け入れやすい技術介入の在り方を常に念頭に入れて活動を行っています。

 

参考文献

Ana Maria Loboguerrero et al. Perspective article: Actions to reconfigure food systems. Global Food Security 26 (2020) 100432. https://doi.org/10.1016/j.gfs.2020.100432

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)