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156. 稲作の収量減の元凶、ウンカの発生を食い止めたい

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トビイロウンカ(英名brown planthopper: BPH、学名Nilaparvata lugens)とセジロウンカ(英名White-backed planthopper: WBPH、学名Sogatella furcifera)は、アジアに広く分布するイネの重要害虫です。特にトビイロウンカは、水田で急激に増殖し高密度になると稲を枯れさせて倒伏させる坪枯れを引き起こします。中国や日本を含む東アジアでは越冬できず、毎年梅雨時期に、ウンカの常発生地域であるベトナム中北部を飛来源として、中国を経由して日本へ飛来することが明らかになっています。近年、殺虫剤抵抗性をもった個体群が飛来してくることで、従来日本で使用されていた殺虫剤での防除が難しくなっています。

今年度農林水産省が発表した病害虫発生予察情報によると、東海以西ではトビイロウンカを対象とした注意報が28県、警報が11県で発表されています(10月6日現在)[1]。7月の低温、日照不足に合わせて、台風やトビイロウンカの被害が、作況指数の低下に影響する地域も一部出たようです(9月15日現在)[2]。

病害虫の発生には、気象条件や農薬散布状況等の複数の要因が関係します。特にウンカのような越境性害虫は、日本のみならず飛来源であるベトナム、中国における発生状況、気象条件、農薬散布状況等の影響を受けます。国際農研では、平成28年度よりウンカの飛来源であるベトナムの植物保護研究所と共同でウンカの総合的防除体系の構築を目指した研究を行い、これまで現地でのウンカの発生状況や殺虫剤散布状況および問題点などを明らかにしてきました[3]。今年度の日本への飛来に影響するベトナムの冬春作(2月頃田植え~5月頃収穫)のウンカの発生状況については、現在解析中ですが、植物保護研究所からの情報によると、一部の地域でウンカが高密度になった地域はあるが、全体としては例年並みの発生だったようです。国際農研では、今後も、飛来源でのウンカの防除体系の構築を目指して研究を続けていきます。

 

[1] https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/attach/pdf/120104_yoho-1…

[2]https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/attach/pdf…

[3] https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2019_b07

(文責:松川 みずき)

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