Pick Up

891. 温暖化を食い止めるために残された炭素収支

関連プログラム
情報

 

891. 温暖化を食い止めるために残された炭素収支

カーボンバジェット (Carbon Budget) :炭素収支とは、「他の人為的気候変動要因の影響を考慮に入れた上で、地球温暖化をある一定の確率下で、特定の気温上昇レベル以内に抑えることができる、累積CO2排出量の最大量」を指します。

パリ協定の1.5℃ゴール の達成に向け世界のCO2排出量をカーボンバジェット内に収めるためには、カーボンニュートラルまでCO2排出量をへらす必要があるとされています。
10月30日、Nature Climate Change誌で公表された論文は、温暖化を1.5℃以下にとどめるために排出可能な残りの炭素収支(the remaining carbon budget (RCB))は僅かしか残っておらず、また計算法に伴う不確実性も多いことを指摘しました。
論文は、温暖化を50%の確率で1.5℃目標に抑えるための残りの炭素収支は2023年1月時点で約 250 GtCO2であったとし、これは現在のCO2排出水準換算で6年分の排出に等しい数値です。50%の確率で2℃以下に抑えるための残りの炭素収支は約1,200 GtCO2でした。
炭素収支を巡る推計の不確実性要因は主に、二酸化炭素以外の温室効果ガス排出量にあり、地球物理学的な不確実性だけでなく、社会経済的な予測にも左右されるとのことです。

食料システムは、メタン(CH4)や亜酸化窒素(N2O)など、二酸化炭素以外の温室効果ガス排出に大きくかかわっています。地球のために、食料システムの関係者も、世界人口に栄養ある食を提供しつつ、温室効果ガス排出を抑制し環境負荷を最小化するイノベーションと行動変容の適用が急務です。

 

(参考文献)
Lamboll, R.D., Nicholls, Z.R.J., Smith, C.J. et al. Assessing the size and uncertainty of remaining carbon budgets. Nat. Clim. Chang. (2023). https://doi.org/10.1038/s41558-023-01848-5

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

関連するページ