アフリカ政治経済情報に関するオンラインサイトThe Africa Reportは、2020年6月30日、「農業部門の変革を通じ、アフリカにおける食料安全保障危機を終わらせよEnd food insecurity across Africa through agricultural change」記事を投稿しました。

2007年に始まった金融・債務危機によって、食料価格は上昇、世界的な食料危機をもたらしました。食料危機は、メキシコ、バングラディシュ、ブルキナファソなどの国々で政情不安をもたらし、中東においては2012年の「アラブの春」を誘引しました。

2020年3月、世界中のスーパーマーケットの棚から商品が消える中、前回と同様の食料危機が起こるのではないかという懸念が浮上しました。実際に多くの国では労働者不足に陥り、ロシアの小麦やベトナムのコメなど戦略的な穀物輸出規制に踏み出した国もありました。こうした懸念に対し、これまでのところ、フードサプライチェーンは欧州・北米・アジアと南米の殆どの地域に食料を滞りなく届けています。2008年に比べ、世界的な食料生産も十分あり、穀物備蓄は2倍となっています。

残念ながら、アフリカでの事情は異なります。多くの国においてフードシステムとそれを支えるガバナンス・メカニズムは脆弱なままで、負の影響を緩和する社会保障メカニズム・制度や民間部門が存在しません。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって引き起こされたサプライチェーンの寸断は、アフリカにおけるフードシステムの脆弱性を炙り出したと言えます。

アフリカにおいて食料危機の引き金となりうる要因は以下の4点となります。

一つ目は、COVID-19封じ込め策と世界経済不況によって影響を被った世帯が食料を購入する所得を失ったことです。IFPRIによる分析によると、3月21日から5月4日までの6週間のロックダウンにおいて、ルワンダのGDPは39％下落し、貧困は20％上昇しました。

二つ目は、グローバル・サプライチェーンの分断により、アフリカで年間510憶ドルにのぼる食料輸入のための外貨獲得手段が失われたことです。輸出の大部分は、旅客機の貨物として輸送されています。国境封鎖とともにフライト数が落ち込むとともに、貨物キャパシティが落ち込み、2月から4月にかけて航空貨物費は80％急騰しました。

三つ目は、ローカルな農業生産の寸断です。エチオピアでは、政府は今後の収穫期における食料生産が8％落ち込むことを予測しています。

四つ目は、ロジスティックスの調整における課題です。国境封鎖とドライバーへの規制により、西アフリカでの輸送キャパシティは4月に30％落ち込みました。

大陸における政情不安・人道的危機を緩和するために、フードシステムの脆弱性を克服し、将来のショックに対するレジリエンスを高めるには、何ができるでしょうか。

近年の開発途上国における農業開発の経験から得られる洞察は、国際社会は強靭性を強化する上でアプローチを変える必要があるということです。農民への直接的な短期支援に狭くフォーカスするだけでは不十分であり、ローカル市場発展と政府システム構築への支援が必要です。このためには、アフリカ政府による農業転換(agriculture transformation)アジェンダを支援し、ホスト国によって最優先とされる農業バリューチェーンと市場を対象に、参入する国々に対するビジネス機会を生み出すような金融・技術的支援・投資促進を調整することを意味しています。

多くの政府は、既にグローバル経済において実際に競争力を有し、多くの農業・非農業雇用を生み出し、イノベーションと起業家精神を盛り上げるバリューチェーンに着目しています。支援は農業生産分野に留まるべきでなく、農村インフラ、農業加工、金融・土地・投資・アグリテックソリューション・スキルへのアクセスといった分野に拡大されるべきです。

国際社会はアフリカ諸国の農業転換アジェンダを承認し支援すべきです。これはアフリカと国際社会が食料安全保障という共通のゴールを達成する最上の方法です。でなければ、アフリカにおけるCOVID-19危機は新たな食料危機をもたらすリスクを負いかねません。

参考文献

The africa report. End food insecurity across Africa through agricultural change. Posted on Tuesday, 30 June 2020 https://www.theafricareport.com/31741/end-food-insecurity-across-africa-through-agricultural-change/?utm_source=newsletter_tar_daily&utm_campaign=newsletter_tar_daily_30_06_2020&utm_medium=email

（文責：研究戦略室　飯山みゆき）