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1328. 50年前の気候・食料問題と科学技術の役割に関する議論

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1328. 50年前の気候・食料問題と科学技術の役割に関する議論

 

Nature誌のアーカイブは、50年前のNature誌記事を振り返り、当時の科学者らにより、気候・食料・社会の相互作用における主要な問題に効果的に取り組むための研究戦略開発を目的とした国際会議が次々と開催されたことを示しました。当時は、温暖であった20世紀前半から寒冷化が進んでいた時期でしたが、気温変化そのものよりも、気候変動が世界の食料供給にとって深刻な脅威となるという点について科学者らの間で共通の合意が得られており、深刻化する気候・食料・社会問題の解決に科学技術の貢献の必要性が議論されました。

過去記事によると、1975年頃、大気科学者や農業科学者、そして経済学、国際開発学、法学、政治学などの分野の専門家が、食料と社会の相互作用における主要な問題のいくつかを特定し、それらの問題に効果的に取り組むための新たな研究戦略を開発することを目的とした一連の国際会議に集まりました。

これらの会議の参加者は、食料需要の急増、世界の穀物備蓄の減少、そして人口密度の高い多くの国々が、地球の反対側にある農業生産性の高い少数の地域への食料供給への依存度を高めている不安定な時代において、気候変動が世界の食料供給にとって深刻な脅威となっているという懸念を共有していたようです。

一方、20世紀前半の気候は過去1000年間の平均よりもかなり温暖であり、20世紀前半に徐々に上昇した地球の平均気温が1975年までの25年間で低下し、少なくとも北緯55度以上の緯度では、寒冷化傾向にありました。寒冷化傾向が今後も続くかどうかについては気候科学者の間でも意見の相違があり、その背景として、当時は気候変動の原因とメカニズムは十分に理解されていない点がありました。一方、むしろ、気温変化そのものよりも、気候変動、特に降水分布の変動性が高まる可能性の方が、より大きな懸念事項であると考えられていました。

科学者らは、干ばつ等の気候異常による作物収量の深刻な減少や大規模な不作の結果として、当時から10~20年のうちに、地域的および世界的に大規模な食料危機が発生する可能性を見据え、緊急事態への効果的な国内および国際的な対応に貢献できる可能性のある研究および政策戦略の必要性を議論したようです。とりわけ農業部門の科学者らは、様々な気候異常が様々な作物、特に新しい高収量品種に及ぼす潜在的な影響を評価し、気候ストレスが農業生産性に与える影響を軽減できる育種戦略、ならびに作物、土壌、水管理技術を検討すべきとされました。

また、政策立案者は、数十年にわたる気候ストレスによって、世界全体ではないにしても、広大な地域に影響を及ぼす深刻な食料不足が発生する可能性を踏まえ、農業と食料に関する国内および国際的な政策を評価する必要性を訴えました。悪天候の年は、必ずしも世界の食料生産量を減少させるとは限らないとしても、世界の食料貿易パターンを混乱させ、食料価格を高騰させる可能性を秘めています。その結果、一部の地域では、食料がないのではなく、食費が高すぎてまともな食事をとれないために人々が飢えることが懸念されました。

 

アーカイブは、2025年現在も、気候変動(気温上昇)と食料問題の議論は尽きないとしつつ、科学技術の知識を効果的に問題解決に適用するための枠組みを構築する責任は、作物育種家、気候学者、そして人工降雨技術を推進する人々にとどまらず、政策立案者にかかっている、と結んでいます。

(参考文献)
NEWS AND VIEWS, 26 August 2025. Scientific meetings debate the effect of climate change on future food production. The threat to global agriculture from climate change gains scientific consensus, and a musing about the reasoning ability of domestic cats in our weekly dip into Nature’s archive. doi: https://doi.org/10.1038/d41586-025-02534-6 
https://www.nature.com/articles/256688a0.pdf


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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