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1229. 地球規模の水循環の恒久的な変化

1229. 地球規模の水循環の恒久的な変化
大気中の炭素レベルと地球の気温の関係についての理解は、1895年にスウェーデンの科学者Svante Arrheniusが二酸化炭素濃度の変動が地球温暖化に影響を与える可能性があると主張したときにさかのぼります。地球の温暖化が地球の水循環(地球と大気の間の継続的な水の移動)にどのような影響を与えるかは、水資源管理と天気予報にとっても重要な問題です。水循環の局所的および地域的な変化は観察されてはいますが、地球規模の変化に関する決定的なエビデンスはまだありません。この疑問に答えるには、数十年にわたる地球の平均海面データと、高度な気候および水文学的モデリングが必要となります。
Science誌で公表された論文は、複数の地球規模の地球物理学的データセットを統合することで、現在の気候変動下で陸上の水貯蔵量が恒久的に減少している証拠を提示しました。論文によると、世界の陸上貯水量は着実に減少しており、21 世紀初頭には約 1.6 ギガトンの大幅な減少が見られました。東アジア・中央アジア・中央アフリカ・南北アメリカといった地域では、土壌水分が大幅に減少しています。また、失われた陸上の水分が以前のレベルまで回復していないこともわかりました。この持続的な減少傾向は、長期にわたる干ばつ状態と特定の地域での降水量の減少により、土壌水分の減少が不可逆的である可能性があることを示唆しています。
一方、専門家は、気候変動下における地球規模の水循環の理解を深めるには、降水量と蒸発散量 (蒸発と蒸散による陸地から大気への水の移動) に影響を与えるさまざまな要因も考慮する必要があるとし、変化する気候の影響下でこれらの要因を正確にとらえることができる高度な陸面および水文学モデルの開発が不可欠となると述べました。
(参考文献)
Ki-Weon Seo et al, Abrupt sea level rise and Earth's gradual pole shift reveal permanent hydrological regime changes in the 21st century, Science (2025). https://www.science.org/doi/10.1126/science.adq6529
Luis Samaniego, Permanent shifts in the global water cycle. Decades of terrestrial water-storage changes reveal an irreversible decline in soil moisture. Science (2025) https://www.science.org/doi/10.1126/science.adw5851
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)