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1202.過去3年の世界食料危機

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1202.過去3年の世界食料危機

 

3年前の2022年2月24日、ロシアによるウクライナに侵攻を機に、主要食料輸出国を巻き込んだ地政学的リスクは、世界食料安全保障を脅かしました。欧州理事会のHPに掲載された記事が、その影響について振り返っています。

ロシアのウクライナ侵攻により、主要な穀物輸出国であるウクライナの輸出は劇的に減少しました。これにより、世界中の何百万人もの人々が大きな食料安全保障上の懸念に直面しました。

2022/2023年のウクライナの穀物生産量は29%減少しました。戦争前、ウクライナの農産物輸出の約90%は海上輸送されていましたが、戦争開始後、ロシア軍はウクライナの黒海港を封鎖し、輸出を事実上停止させ、2022年3-5月には輸出が90%以上減少しました。6月以降は輸出量が増加しましたが、それでも2021年水準にくらべはるかに低く、輸出がピークに達した9月と10月でさえ、2021年水準より57%と42%減少しました。

EUが代替輸送ルートを実施し、国連とトルコが港湾の封鎖を解除する措置(「黒海穀物イニシアチブ」)を講じた後、輸出は増加し、食料価格は着実に下落しました。しかし、2023年7月にロシアは黒海穀物イニシアチブから撤退しました。当時、ウクライナの穀物の40%は黒海の港を経由して輸送され、60%は陸路で輸送されていました。世界的に良好な収穫見通しのおかげで、現在は食糧価格は比較的安定しています。しかし、戦争とロシアによる黒海港の封鎖により、ウクライナの世界市場への穀物や食料品の輸出能力が低下しているため、世界の食料供給は不安定なままです。

戦争による永続的な影響も無視できません。2021年、ウクライナの農家は春作物を約1,700万ヘクタールに播種していました。これはオーストリアとチェコ共和国を合わせたより大きい面積です。しかし、戦争が始まってから、2022年には農家の播種量は22%減少しました。播種されなかった面積(280万ヘクタール)は、ベルギーとほぼ同じ大きさです。

ウクライナの輸出品、特に小麦は、一部のアジアおよびアフリカ諸国にとって極めて重要です。2016年から2021年まで、これらの国々はウクライナの小麦の92%を輸入していました。黒海穀物イニシアチブを通じて輸出された小麦の65%は、開発途上国に届けられました。

戦争によるウクライナの穀物輸出への影響は、戦前の播種と2022年に蓄積された大量の在庫によって緩和されましたが、生産施設の損失または損傷、および未作付地域により、将来の輸出は深刻な影響を受けることが懸念されています。2021/2022年と比較すると、ウクライナの穀物生産は2022/2023年に29%減少し、さらに減少すると予想されています。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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