Pick Up

1167. 農業市場情報2024年のレビューと2025年見通し

関連プログラム
情報

 

1167. 農業市場情報2024年のレビューと2025年見通し

 

2024年も終わりに近づいてきていますが、農業市場情報システム(Agricultural Market Information System -AMIS)は農作物市場に関する2024年のトレンドを振り返り、2025年の市場動向に影響を与える要因について見通しを行いました。

ウクライナでの戦争が勃発した2年前、農業部門を含む世界経済の全セクターが前例のない衝撃を受けたのに対し、今年は食料に関する世界市場価格は比較的落ち着いて推移し、価格変動は主に基本的なファンダメンタルズの動向を反映したものとなりました。

2024年、世界の一部地域で悪天候の影響を受けても、他地域における好条件によって相殺され、商品作物生産は比較的安定的に推移しました。小麦、トウモロコシ、米、大豆は世界中で栽培されており、北半球および南半球での生産サイクルに応じて、農家が世界市場価格に迅速に対応することで価格調整が機能しました。対照的に、カカオ・コーヒー・オリーブオイルといった、地理的に生産地域が偏っている商品作物は、サプライショックに脆弱で、今年、大幅な価格上昇を経験しました。

世界各地で主食穀物が生産されていたとしても、飢餓撲滅の闘いにとって、貿易の透明性確保が不可欠です。世界の穀物および油糧作物の貿易の80%以上が海上ルートで行われます。2024年、世界貿易は、パナマ運河の低水位と紅海の政情不安の展開から生じる配送制限と混乱に直面し、貨物の移動距離の延長と保険料を含む貿易コストの増大、そして温室効果ガス排出の増大、を経験しました。現在までにパナマ運河は正常化した一方、紅海を通過した船は2023年11月の70~75隻から2024年11月は20〜25隻に激減しましたが、食料の入手可能性に大きな影響は及ぼしていないようです。

今後も、世界の農業食料システムは、異常気象、地政学的緊張の高まり(近東を含む)、景気後退、他セクター市場における政策の変更や新展開、に起因するショックに対して脆弱なままで、これらショックは需給バランスを転換させ、食料安全保障に負のアウトカムをもたらしかねません。

降雨分布の変化や異常気象の影響は、今後、作物収量や生産レベルでの影響が懸念されます。貿易・バイオ燃料の義務化・補助金・輸出入規制といった政策も市場動向に引き続き影響を与えると予測されます。輸出規制や貿易をゆがめる手段は価格の変動や市場不確実性をもたらすため、各国はそれらの措置を控えることが求められます。インフレや為替の変動も市場トレンドの形成に影響を与えます。

フランスのG20で立ち上げられたAMISは、穀物、大豆、油糧作物、肥料といった、途上国の食料安全保障に欠かせない商品市場に対するモニタリング情報を提供することにより、透明性を確保し、情報の非対称性を解消することで、市場価格のボラティリティを抑制することに貢献しています。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

関連するページ