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1126. 地球温暖化による経済的打撃: 貧困層に加え、富裕層のリスクも急速に高まる

1126. 地球温暖化による経済的打撃: 貧困層に加え、富裕層のリスクも急速に高まる
気温と降水量の極端な変動は、世界中の生産に影響を与えます。これらの生産の混乱は、将来の温暖化によって変化し、サプライチェーンを通じてローカルおよびリモートの消費者に影響を与えます。
ポツダム気候影響研究所(The Potsdam Institute for Climate Impact Research)が発表した研究は、地球温暖化によってますます激化する不規則な気象現象が、世界のさまざまな所得グループによる生産と消費にどのように影響を与えるかを分析しました。
経済的なインパクトは非線形になる可能性があるため、貿易の影響を定量化することは困難です。本論文は、極端な気象現象の直接的な不平等の影響に焦点を当てています。論文は、利益を最大化する企業と厚生を最適化する消費者のグローバルな経済相互作用をシミュレートし、サプライチェーンに沿った天候による生産の混乱に起因する消費のリスクを評価しました。
分析は、気候変動による経済的リスクが最も大きいのは世界の最貧困層であるという先行研究を裏付けるものでした。国同士の比較では、貿易に対する不利な依存度や季節的な気候に晒されることから、中所得国のリスクが高くなっています。将来の気候変動の下では、ほとんどの国でリスクが増大することもわかっています。一方、地球温暖化は、サプライチェーンを通じて波及し、世界中の商品やサービスに影響を与え、消費者リスクを増大させます。最も大きなリスク増大に直面しているのは高所得の消費者層です。
全体として、世界中の消費者は、収入にかかわらず、地球温暖化による課題の増加に直面することになり、カーボンニュートラルへの移行がなければ、最終的にはこれらの課題に対処できなくなります。リスクは国内および国家間の所得に関して不均一であり、ターゲットを絞った地域的およびグローバルなレジリエンスの構築によりリスクが減少する可能性があります。
(参考文献)
Lennart Quante, Sven N. Willner, Christian Otto, Anders Levermann (2024): Global economic impact of weather variability on the rich and the poor. Nature Sustainability. [DOI: 10.1038/s41893-024-01430-7] https://www.nature.com/articles/s41893-024-01430-7
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)