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1073. 樹木木質表面における大気中メタン吸収

1073. 樹木木表面における大気中メタン吸収
メタンは重要な温室効果ガスで、農業分野では水田・畜産由来のメタン排出削減に関心が高まっています。一方、メタン収支における樹木の役割についてはこれまで十分知られていませんでした。いくつかの研究は、湿地等における樹木が土壌由来のメタンを放出源となっていることを示す一方、耕地等に植生する樹木の木質表面上における微生物の働きが大気中メタンの正味の吸収源として機能する可能性が指摘されるようになっています。
Nature誌で公表された論文は、熱帯林、温帯林、北方林における樹の木質表面のメタン交換を調べた結果、木質表面、特に林床から約2m以上の場所でのメタン吸収の貢献により、樹木が正味でメタン吸収源となる可能性を示しました。
全球レベルでの森林樹木の樹木表面積推計値を用いた予備的な推定では、樹木は大気中のメタン吸収の24.6〜49.9Tgに寄与している可能性があることが示唆されています。とりわけ、二次林はバイオマス量が小さいかわりに、小さい樹木が多数ある条件は表面面積が大きいことを意味し、再植林の炭素吸収の低さをメタン吸収が補完する可能性を意味します。
熱帯林による炭素吸収の限界および気温上昇におけるメタン寄与度を考慮すれば、本分析結果は、熱帯林と温帯広葉樹林の保護と再植林に、従来想定されていたよりも大きい(10%近く)気候変動緩和貢献の可能性があることを示しています。今後、現場レベルで様々な樹木種ごとのメタン吸収能力に関する検証が求められます。
(参考文献)
Gauci, V., Pangala, S.R., Shenkin, A. et al. Global atmospheric methane uptake by upland tree woody surfaces. Nature 631, 796–800 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07592-w
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)