研究成果

葉表面の気孔の閉じ具合を調整しオゾン耐性を強化-大気汚染物質に強い作物の開発を目指して-

平成28年3月29日

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター
国立大学法人 埼玉大学

ポイント

  • 大気汚染物質であるオゾンに対する植物の耐性を強化できる転写因子を同定
  • その転写因子は気孔の閉じ具合を調節する仕組みに関与していることを解明
  • 大気汚染物質などの環境ストレスに強い作物の開発への貢献に期待

 

概要

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)生物プロセス研究部門【研究部門長 田村 具博】 植物機能制御研究グループ 高木 優 招へい研究員 (兼) 埼玉大学理工学研究科 教授、永利 友佳理 元産総研特別研究員(現:国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター 研究員)らは、国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター【理事長 岩永 勝】(以下「JIRCAS」という)、国立大学法人 埼玉大学【学長 山口 宏樹】(以下「埼玉大」という)、国立研究開発法人 国立環境研究所、国立大学法人 名古屋大学、国立大学法人 岡山大学、国立研究開発法人 理化学研究所と共同で、植物の葉表面にある気孔の閉じ具合を調整しオゾン耐性を強化することに成功しました。

 近年、大気汚染が、農作物や森林に甚大な被害をもたらしています。今回、植物の葉緑体の発達を制御する転写因子GLK1、GLK2転写因子)のキメラリプレッサーを植物で発現させると、大気汚染物質であるオゾンに対する耐性が著しく向上することを明らかにしました。この転写因子のキメラリプレッサーを発現させた植物では、気孔が閉じ気味であり、GLK1、GLK2転写因子が気孔の開閉に関わる因子に影響を与えることが分かりました。これらの転写因子を用いて適切に気孔開閉を調節することができれば、大気汚染耐性や干ばつ耐性などの環境ストレスに強い作物の開発に貢献することが期待できます。

 なお、この研究成果の詳細は、2016年3月28日 (米国東部時間)に米国の科学誌Proceedings of the National Academy of Sciencesにオンライン掲載されました。

発表論文

著者
Yukari Nagatoshi, Nobutaka Mitsuda, Maki Hayashi, Shin-ichiro Inoue, Eiji Okuma, Akihiro Kubo, Yoshiyuki Murata, Mitsunori Seo, Hikaru Saji, Toshinori Kinoshita, Masaru Ohme-Takagi 
論文タイトル
GOLDEN 2-LIKE transcription factors for chloroplast development affect ozone tolerance through the regulation of stomatal movement (DOI: 10.1073/pnas.1513093113

お問い合わせ先

国立大学法人 埼玉大学 
理工学研究科 戦略的研究部門 教授 (兼務)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所  
生物プロセス研究部門植物機能制御研究グループ 
招へい研究員 高木 優  

国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター  
生物資源・利用領域  
研究員 永利 友佳理  

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 
生物プロセス研究部門 植物機能制御研究グループ 
主任研究員   光田 展隆  

*本プレスリリースの詳細については、国立研究開発法人 産業技術総合研究所ホームページ(http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20160329/pr20160329.html)でご覧頂けます。

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