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1031. サプライチェーンが食品ロスと温室効果ガス排出に与える影響
1031. サプライチェーンが食品ロスと温室効果ガス排出に与える影響
本日は、Environmental Research Letters誌に掲載された記事(Heiman and Miller 2024)をご紹介します。
世界で生産される食料の 3 分の 1 が廃棄されている一方で、8 億人近くが飢餓に苦しんでいます。一方、食料ロスは人為的な温室効果ガス (GHG) 総排出量の約 8% を占めています。本研究では、サプライチェーン(注)へのアクセス改善が 、7つの地域において 7 種類の食品グループの食料ロスとそれに伴う GHG 排出量にどのような影響を与えるかを評価するための食料ロス推定ツールを開発しました。
世界中のフードサプライチェーンが完全に最適化された場合、最大 6 億 2,000 万トン (Mmt) の食品ロスが削減され、年間 1.8 GtCO2-eqの削減にもつながる可能性があると推定しています。これは、食品ロスの約半分、また食品ロス関連の温室効果ガス排出の約4割にあたります。南アジアと東南アジアで 1 億トン以上の野菜・果物のロスを、サブサハラアフリカで 7 億トン以上の CO2-eqのロスを防ぐことができます。
さらに、よりローカライズされ、工業化の進んでいない(「農場から食卓への」)フードサプライチェーンを開発することで、最適化されたチェーンよりも節約ができる可能性があります。ローカライズされたサプライチェーンを利用すると、世界中で2億5000万トン以上のイモ類を失わずに済み(最適化されたチェーンよりも1億トン以上)、発展した地域では肉の損失による温室効果ガス排出量を3億トン(CO2-eq)以上削減できます。
食品の種類によって環境に与える影響の大きさが異なるため、食品全体の損失を減らすことを優先するか、温室効果ガス排出量の削減を優先するかによって投資は異なるとされています。
注)本論文では「コールドチェーン」と述べていますが、冷蔵することによってロスが減るという話ではなく、サプライチェーンを最適化する場合という話のようでしたので、サプライチェーンとしています。
(参考文献)
Aaron Friedman-Heiman and Shelie A Miller 2024 Environ. Res. Lett. 19 064038. https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/ad4c7b
(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)