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1016. 作物遺伝資源多様性保全に貢献した科学者らが2024年世界食料賞を受賞

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1016.  作物遺伝資源多様性保全に貢献した科学者らが2024年世界食料賞を受賞

 

気候変動・パンデミック・紛争・地球壊滅の危機に対し、長期的に世界の食料安全保障を維持する上で、作物遺伝資源の多様性は決定的に重要な役割を果たします。5月9日、Geoffrey Hawtin 博士とCary Fowler博士が、世界食料安全保障にとり極めて重要な作物多様性・遺伝資源の保全において果たしてきた貢献が評価され、2024年世界食料賞が与えられることが発表されました。

Geoffrey Hawtin 博士とCary Fowler博士は、過去50年間にわたり、科学者・政策アドバイザーとして、政府・科学者・農家・市民社会を巻き込み、世界中の作物ジーンバンク運営・資金調達におけるリーダーシップを発揮し、6000種以上の作物種や文化的に重要な植物の保全に関わってきました。とりわけ、両氏は、ジーンバンクの安定的な運営を目的としたグローバル作物多様性トラスト(Global Crop Diversity Trust (Crop Trust))、および、現代版「ノアの箱舟」とも称されるノルウェーにおけるスヴァールバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)の設立にも貢献してきました。 

ジーンバンクは、品種開発・育種を行う科学者にとって貴重な材料を提供します。世界の1750以上のジーンバンクが、作物の気候レジリエンス・病害虫抵抗性・栄養価・塩害耐性等の形質を有する作物740万以上のサンプルを収集保管しています。農家の圃場から品種の多様性が次第に失われていく一方、こうした品種をバックアップとして保管しておくことは極めて重要です。実際、スヴァールバル世界種子貯蔵庫は、シリア紛争の影響を受けた国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)のジーンバンクのバックアップとなったことを証明しました。

遺伝資源の多様性は、農業の生命線です。世界中の異なる地域の生産環境に適応できる作物種の存在ゆえに、農業が成り立っています。一方、世界中で、多くの作物種は90%以上の多様性を失ってきたとも推計されています。今後、人為的な気候変動に伴い、過去12,000年間に人類が経験したことがないような異常気象や環境変化が予測される中、食料安全保障を維持するための農業が適応していくうえで、遺伝資源の多様性の保全が急務となります。

 

今年、国際農研においても、レジリエントな食料システム構築における、作物遺伝資源多様性の重要性について、積極的な情報発信を予定しています。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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