Pick Up

921. 世界の干ばつスナップショット2023

関連プログラム
情報


921. 世界の干ばつスナップショット2023


地震や洪水・森林火災といった突発的な震災と比べ、干ばつは静かに進行しますが、近年その頻度と深刻さは増加傾向にあり、生態系・地域経済・人々の生活に広く影響を及ぼすようになっています。

先日までドバイで開催されていたCOP28において、UNCCD(国連砂漠化対処条約)と国際干ばつ強靱同盟(IDRA)が協力し作成した「世界干ばつスナップショット2023」報告書が公表されました。

報告書は、主に過去2年間に発表された研究成果・各国および国際機関等の公表資料を基に、地域別の干ばつ発生状況と被害規模に言及しつつ、将来に向けた干ばつ対策の不十分さに警鐘を鳴らしました。


グローバル

干ばつ発生には国境はありませんが、その影響は不平等で、脆弱な社会層に降りかかる傾向があります。101のUNCCD締約国からの報告データによると、2022年に約18億4,000万人が干ばつ被害に見舞われており、そのうち4.7%が重度または極度の干ばつ程度に晒されたことが分かりました。さらに、世界の干ばつ被害人口の約85%が低所得または中所得国に居住し、干ばつによる死亡数は女性と子供が男性の14倍に上ったことを指摘しています。

 

アジア

干ばつによる高山地帯の氷河の損失が著しく、過去 40 年間で減少し続けていること、その生態系への影響が懸念されました。加えて、2022年の異常な温暖で乾燥した気候により、イラン、イラク、シリア、アフガニスタン、ミャンマーは全領土で河川などの記録的水位低下に見舞われました。中国の南部、長江だけを取ってみても記録的低水位によって約500万人が影響を受けたとされています。

 

アフリカ

2022年12月末の時点において、進行中の干ばつにより「アフリカの角」全域で約2,300万人が深刻な食料不安に陥っていました。南アフリカの調査では、生態系への影響における干ばつのインパクトは、放牧地の喪失が33%、水資源の損失が17%、気温の上昇が11%及び植生の損失が11%と推定されました。報告はまた、農作物の生産不良による食料不足や食料価格の高騰が食料安全保障を脅かしていることも明記しています。

 

アメリカ

農産物の生育不良による経済的ロス(2023年のアルゼンチンの大豆生産減)や河川の流量低下による運送制限について触れています。一方で、揚水による地下水の減少が干ばつによってさらに深刻に進むことが資源の持続可能な利用に対する大きな脅威となっています。

 

ヨーロッパ

アメリア大陸同様ヨーロッパも河川の流量低下による貿易損失、農産物の生育不良に晒されています。さらに近年では夏の気温上昇が著しく2022年において観測史上最も暑い夏を経験し、平年の4倍近くとなる63万km2もの土地が干ばつに晒された結果となりました。

 

以上は干ばつが引き起こす各種被害の一部であり、干ばつにより飢餓を経験し、移住を強いられ、命を落としている人々います。作物の収量減や貿易不良、エネルギー生産の低下といった経済的損失も生じています。

世界が向くべき方向はただ1つ、これ以上干ばつを拡大させないことです。理解を広め、関心を引き、参加を招くことで共に変革を起こしていくことが必要です。


(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)

 

関連するページ