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890. 気候変動のもと地球上の生命は未知の領域へ

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890. 気候変動のもと人類は未知の領域へ

 

10月24日、BioScience誌にて、世界の著名な研究者が2023年気候白書(The 2023 state of the climate report: Entering uncharted territory)を発表、気候変動の加速的な進行により地球上の生命は未知の領域に突入したと警鐘をならしました。そのメッセージを紹介します。  

地球の生命は気候危機の包囲網におかれ、これまで経験したことのない未知の領域に突入ししたようです。科学者らはもう何十年も前から、人為的経済活動に起因する温室効果ガス排出に伴う地球温暖化加速が、極端な気候条件によって特徴づけられる未来をもたらすことについて警告してきました。不幸にも、もう時間切れのようです。かつてないペースで気候関連の記録が破られるなか、これまで人類が経験したことがないような気候危機のフェーズに移行しつつあります。
 

2020年の論文(Ripple et al.)にて気候の緊急事態(climate emergency)が宣言され、現在15,000人以上の研究者が気候変動に対して地球が発する様々なサインを認めています。実際に今年に入っても気候災害に関する記録が更新され続けていますが、人類による気候変動対策は殆ど進展していません。気候変動が人類の生存を脅かすという情報を広く伝え、研究者・政策策定者・社会に向けてリーダーシップの発揮を訴えていく必要があります。

地球温暖化の影響はより厳しさを増し、世界中で社会の崩壊をもたらしかねない可能性も秘めています。今世紀末までに世界人口の3分の1~半分に相当する30-60億人が、強度の熱波・食料不足・死亡率上昇によって生活困難となる地域におかれる予測もあります。このように大きな課題には大胆な解決法が求められます。そのために、我々も、気候の緊急事態を単なる個別の環境問題としてではなく、生存に対するシステミックな脅威として捉える必要があります。気温上昇だけでも破壊的ですが、生物多様性喪失・淡水不足・パンデミックといった相互に絡みあいながら進行する問題の一つの側面に過ぎません。我々人類の地球の有限資源に対する需要が生物多様性の過剰搾取と生物多様性喪失をもたらしているという、生態学的オーバーシュートの根本的な原因に取り組むための政策が求められているのです。
我々の地球資源の過剰搾取を正すにあたり、先進国や富裕層による限界なき成長や過剰消費といった非持続的で不公正な観念と対峙する必要があります。資源の過剰消費を削減し、より循環的な経済の下でロスや廃棄物を削減・再使用・リサイクルし、人類の繁栄と持続性を優先すべきです。気候正義にのっとって、とりわけ脆弱なコミュニティの立場にたって、気候行動のコスト・ベネフィットを公平なやり方で負担すべきです。より公平な資源分配のための世界経済再編と、女性・ジェンダーの選択肢・権利に配慮することで世界人口の安定化が求められます。

カーボン排出削減や気候変動だけに着目するのではなく、生態学的オーバーシュートの本質に取り込むことこそが長期的にみて最善の策であるといえます。地球上の全ての生命のために、我々は変革に踏み出す勇気と決意を示さなければなりません。

 

(参考文献)
William Ripple et al, 2023 State of the Climate Report: Entering Uncharted Territory, BioScience (2023). https://academic.oup.com/bioscience/advance-article/doi/10.1093/biosci/…

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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