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878. ~水は命、水は食料。誰も取り残さないために~

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878. ~水は命、水は食料。誰も取り残さないために~

本日10月16日は国連が定める世界食料デーです。2023年のテーマは水です。食料生産においてなくてはならいない存在水について、世界そして我々が直面する課題について取り上げたいと思います。

地球上の生命にとって不可欠な水。 それは人体の50%を構成し、地球表面の70%以上を覆っています。一方、飲料や農業、ほとんどの工業生産においてその利用に適しているのが淡水であり、淡水の世界の水全体に占める割合はわずか2.5%しかありません。

同時に、1人当たりの淡水資源は過去数十年で20%減少しており、長年にわたる農業利用水量の管理不良、地下水の過剰揚水、産業発展や気候変動などによる水質の悪化が原因とされています。

限りある水資源の平等公平な分配、農業生産における水管理の効率化が世界に求められています。

本日は、農業及び食料ステムからみた水に関わる主要課題を3つとりあげて解説したいと思います。
①    水量=農業における水利用管理
②    水質=農薬や化学肥料の残留物による水質汚染
③    水不足=気候変動による飲料、生活水等の不足

 


水量=農業における水利用管理

世界の淡水使用量の 72%が農業用、5%が食品加工用に使用されています。実に膨大量の水資源を費やす食料生産セクターですが、人間1人分の一日の食料生産に使われる水量は2000-5000リットルにものぼるだそうです。

農業生産における地下水利用の灌漑農業の割合は北米で59%、南アジアで57%、北アフリカでは35%、サブサハラアフリカは約5%にとされ、農業における水利用のアベイラビリティ、アクセサビリティ、揚水能力に大きな差があるのが現状です。

農業用水の無駄な流出や蒸発を抑えるべく灌漑方法や設備の改善、新技術の導入を推進し、水利用を効率化できるかが、今いる80億人、2050年には90億人台に達するであろう世界人口を養うため問われています。

 

水質=農薬や化学肥料の残留物による水質汚染

農業による水質への悪影響は、化学農薬及び化学肥料由来の残留物の蓄積や流出に由来します。FAO統計によると、世界で年間平均400万トン近くの農薬が使用されており、その多くは中国や南北アメリカが占めています。

生産量に直接影響する化学農薬・化学肥料の利用ですが、水質汚染の削減に向け、無駄のない適切な利用を見極めることが重要です。農業生産の維持と水環境の改善を両立していくために、調査や分析によって妥協点を見つけ、イノベーションを通じて解決していくことが水を消費する地域住民と農業生産に関わる人々にとってwin-winの関係を築く鍵となるでしょう。

 

水不足=気候変動による飲料水・生活水の不足

水資源の減少と水質の悪化に加え、飲料水・生活水の不足も深刻な問題です。今世界では約24億人の人々が水の供給が不十分な国や地域に暮らしています。また、本来水が豊な中央アフリカ、東アジアや南米の一部地域においても、気候変動による異常気象の影響で季節的な水不足が生じ、水不足問題が日常化しつつあります。
 

 

 

水資源の効果的利用、農薬や化学肥料の適量利用、気候変動を食い止める努力そのものが、水アベイラビリティの改善、食料生産向上、農業による生計維持に繋がります。現在も将来も誰一人取り残さない食料システムの構築に向けて、情報を収集・調査・分析し、データに基づいた実態と背景に合った政策を実施することが求められています。

 

(参考文献)
https://www.fao.org/world-food-day/en
https://www.unesco.org/en/articles/groundwater-making-invisible-visible
https://www.unwater.org/publications/un-world-water-development-report-…
https://www.fao.org/3/cc7340en/cc7340en.pdf

 

(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)


 

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