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759. 国境なき課題、プラスチック汚染

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759. 国境なき課題、プラスチック汚染

安価で軽量のうえ優れた耐久性を持つプラスチック製品は、人々の生活に多大なメリットをもたらしています。食品ロスや廃棄の削減においても、プラスチック袋やプラスチック容器の貢献は大きく、フードサプライチェーンにとって必要な役割を果たしていると言えるでしょう。

一方プラスチックによる環境汚染は深刻です。OECDによるとプラスチックの生産量は 1950~2019年の約70年間に、年間200 万トンから 4 億 6000 万トンに230倍増加しました。2000年から2019年の間では、プラスチック生産量は2億3400万トンから4億6000万トンに倍増、プラスチック廃棄物も2000年の1億5600万トンから2019年には3億5300万トンに倍増しました。2019年において、そのうちリサイクル用に回収されたのは15%、実際に再生処理(recycle)されたのは9%でしかありませんでした。廃棄されたプラスチックの約半分が地中に埋め立てられ、五分の1近くが焼却処理され、22%相当が規制されない場所で廃棄されたり燃やされたり、自然環境へ漏出(leakage)しています。2019年、環境に漏出したプラスチック廃棄物は2200万トンにのぼり、その多く(88%)はサイズの大きいプラスチックであり、マイクロプラスチック(直径5mm以下の小さいプラスチック)のシェアは12%でした。2019年時点で、これまで環境に漏出していったプラスチックのうち、1億900万トンが河川に、3000万トンが海洋に堆積したと推計されています。

廃棄処理以外の課題もあります。プラスチックのカーボン・フットプリントも大きな問題となっており、ライフサイクルを通じて世界の温室効果ガス排出の3.4%に寄与しています。  2019年には、プラスチックは二酸化炭素換算で18億トン(1.8 Gt CO2e)相当の温室効果ガス排出に寄与したと推計され、2060年までに43億トン(4.3 Gt CO2e)に上昇することが予測されています。そのほか、プラスチックのライフサイクルを通じ、オゾン形成、酸性化、人への有害性物質創出、などの問題も悪化することが予測されています。

OECDの2060年までの 政策シナリオ分析によると、世界人口の増加と経済成長を背景に、2019年から2060年までに世界のプラスチック使用量は、4億6000万トンから13億2100万トンへと3倍増が予測されています。全ての国での使用増が予測されていますが、OECD諸国で倍増が予測される一方、とくに経済成長・人口増が見込まれるサブサハラアフリカでは2060年までに2019年比で6倍、インドでは5倍増が予測されています。

同分析は、プラスチックによる汚染撲滅に向けて、国際社会における目標の共有と協調の必要性について述べ、修理(repair)と再利用(reuse)によってプラスチック製品のライフサイクルを延ばすことで廃棄物管理とリサイクルの促進を提案しました。


国境なき課題(Transboundary Problem)であるプラスチック汚染ですが、改善への取り組みは継続的な政策支援と多額の投資を要します。特に発展途上国においてコスト負担は重く、先進国と国際機関らの協力が必要とされています。


(参考文献)

OECD (2022) Global Plastics Outlook Economic Drivers, Environmental Impacts and Policy Options https://www.oecd-ilibrary.org/environment/global-plastics-outlook_dfe09…

OECD (2022) Global Plastics Outlook Policy Scenarios to 2060 https://www.oecd-ilibrary.org/environment/global-plastics-outlook_aa1ed…

Nature (2023) Three ways to solve the plastics pollution crisis. NEWS FEATURE
11 April 2023, by Diana Kwon. https://www.nature.com/articles/d41586-023-00975-5

(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)

 

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