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871. アフリカ食料システム

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871. アフリカ食料システム

 

過去数十年間、中国の経済ブームに牽引され、世界レベルでは食料安全保障関連の指標は改善しました。一方、アフリカは未だに数十年前と同じ課題 ―飢餓と低栄養 - と格闘しています。近年も、気候変動・COVID-19パンデミック・地政学的衝突、そしてそれらが引き金となるサプライチェーンの寸断や価格変動により状況は悪化し、異常気象や紛争の下で飢饉のリスクに直面している国や地域もあります。問題解決への変革を加速するには、大陸自身の変化が必要です。

Nature Food誌にて、アフリカ食料システムについての論考が発表され、9月上旬にアフリカで開催された2つのサミット(アフリカ食料システムサミット@ダルエスサラーム、アフリカ気候サミット@ナイロビ)において議論された飢餓撲滅と持続的な食料システム変革達成に向けた課題について言及しました。その内容を紹介します。

アフリカの食料システムの機能不全 - 栄養に富み持続的で入手可能な食生活を保障することができていないという意味で ― は、貧困と密接に結びついています。この関係は複雑で入り組んでおり、その背景には、歴史的な貿易格差や、アフリカの現実とは全く異なるコンテクストから輸入された結果アフリカのためにはならない開発モデルも含まれます。

同様に、一部の組織や機関は、現地関係者を巻き込まず、コンテクスト特有の事情を無視した農業開発を推進しようとしています。これら戦略には輸出用換金作物の高収量化を目指し、現地の人々や環境への影響、資源の有効活用に配慮がないケースもあります。その結果、より多様で、栄養に富み、強靭で、誰も取り残すことのない食料システムへの投資機会の喪失につながるだけでなく、最悪の場合、環境劣化、社会構造の解体、小規模農家の排除、そして飢餓の恒久化、をもたらしかねません。

関係者全体としてエンゲージメントが必要とされつつも、食料システム危機への解決法は一つではなく、大小規模を問わず民間・公的セクターの関係者の多様性に応じて複数あるべきです。共通のビジョンのもとでも、それぞれの解決法は、各地域の課題と機会に合わせて講じる必要があるのです。

論説は、アフリカ食料システムサミットにて様々なアイデアが提案され、とりわけ小規模農家と女性への投資が約束されたことを評価しつつ、変革のためのアクションの加速が必要であると強調、その実現の条件として、変革が内生的であること、そして略奪的な行動を抑制すること、の2つを訴えました。最初の点は、食料安全保障の解決は文化的に適切で現場の人々のニーズに敬意を払いつつ、さらなる人口増・都市化・技術・企業活動動向、といったアフリカの新たな現実に向き合うことを意味します。2点目は、個人レベル及びマクロレベルで貧困を慢性化しうる市場・政策といった条件に関連します。例として、不利な貿易合意や、不健康な食生活や非感染症疾患を伴う過度に加工された食品輸入の急増が挙げられます。後者はアフリカに限ったことではありませんが、補償的措置を講じるには、交渉力と規制を通じ消費者保護メカニズムが機能することが必要となります。

 

(参考文献)
African food systems. Nat Food 4, 733 (2023). https://doi.org/10.1038/s43016-023-00855-1

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

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