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865. 2023年9月地中海地域における豪雨への気候変動の影響

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865. 2023年9月地中海地域における豪雨への気候変動の影響

 

日本では9月を過ぎても暑い日が続き、ようやく秋めいた気配になったと思いきや、月末にはもう一度暑さが戻るようです。今年は世界で異常気象が報告されてきました。とりわけ通常は夏に降雨の少ないはずの地中海地域では、9月上旬、異常な豪雨と甚大な人的・物的被害が報告されました。

9月19日、極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionは、9月前半にスペイン・ギリシャ・ブルガリア・リビアなど地中海地域を襲った豪雨の背景に気候変動の影響を指摘しました。

9月3日、スペインで数時間内に大量の降雨をもたらし、9月4日~7日にギリシャとブルガリアで豪雨と洪水を伴った「ダニエル」は、9月10日にリビアで壊滅的な降雨を引き起こし、デルナにおいて2つのダムの決壊が多くの犠牲者を出しました。

研究者らは、不確実性の高さに言及しつつも、今回のような豪雨が起きる確率は、スペインでは10年~40年に一度、ギリシャでは80年~250年に一度、リビアでは300年~600年に一度の出来事であるとしました。人為的な気候変動が、ギリシャ・ブルガリア・トルコを含む広域において今回のような異常降雨をもたらす可能性を10倍・強度を40%高めた可能性が高く、リビアで観測されたようなケースは50倍起こりやすく50%強度が高くなった可能性があるとのことです。

この夏はギリシャは既に歴史的な熱波と火災の被害を受けており、そこにダニエルが追い打ちで打撃を与えました。リビアでは、紛争によってダムなどのインフラ管理・整備体制が破綻していたことが被害を拡大しました。それ以上に、1970年代に建造されたダムは300年~600年に一度の降雨に耐えうるようにはデザインされておらず、早期警告システムも整備されていなかった状況で、ダニエルのもたらすリスクを事前に評価することは不可能であったようです。

研究者らは、今後は、現在あるいは過去の気候だけでなく、将来の気候に配慮してインフラをデザイン・維持していく必要性を述べました。リビアのような紛争に苦しむ国にとってはハードルの高い課題ですが、長期的な平均降雨量の減少と、短期間の異常な豪雨のケースを同時に想定する必要があることを意味します。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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