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846. 「新しいあたりまえ」

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846. 「新しいあたりまえ」

8月も残り僅かですが、世界中で異常気象の報告が続いています。
先週、世界気象機関(WMO)は異常気象が「新しいあたりまえNew Norm」になったと発表しました。
 

WMOの科学者は、温室効果ガス排出により人為的に引き起こされた気候変動が主要因であることで、今後もこうした事象の起こる頻度や強度が高まることを警告しました。また、対流圏上層に位置する強い偏西風の流れを指すジェット気流の動きも異常気象の発現に貢献しています。ジェット気流はここのところ、通常よりも南寄りで地域によっては蛇行し、亜熱帯地域からの暖かい大気を引き寄せることで異常な熱波が起こりやすい条件を作り出しています。

こうした熱波は高地にも達し、スイスでは氷点下となる標高が5,298mと記録を更新(昨年は、7月25日に5,184mで零℃を記録)、残りの氷河を融解の脅威にさらしています。カナダでは8月22日時点で660以上の山火事が鎮火できない状況にあり、北極圏に近いノーザンテリトリー内の265件を含む1000件以上の火災が発生、今シーズンで1530万ヘクタールが焼失したと報告されています。欧州連合のコペルニクス大気モニタリングサービスによると、8月中の山火事による温室効果ガス排出は、2014年に観測された記録を3倍上回っていると推計されるそうです。

極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionは、8月22日、気候変動によってカナダ東部の山火事が起こる確率が2倍増加していると発表しました。科学者らは、山火事の被害は延焼した地域にとどまらず、健康や命を脅かす大気汚染により移動を余儀なくされた生活被害や北米全体の経済活動にも及ぶと言及しています。

 

この夏の北半球の異常気象は、世界中の人々に気候変動の緩和・適応の緊急性について考えるきっかけを与えているようです。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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