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744. 世界の食料消費が将来の温暖化に及ぼす影響

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744. 世界の食料消費が将来の温暖化に及ぼす影響

農業・食料システムは人為的な温室効果ガスの主要な排出源の一つです。温室効果ガス排出のネットゼロ達成に向け、将来の排出動向を予測・推計することが必要ですが、農業・食料システムにおける排出源については、二酸化炭素換算という過剰に簡素化された手法では捉えきれないという問題があります。

Nature Climate Change誌に今月公表された論文は、農業・食料システム由来の温室効果ガス排出のインベントリーを、温室効果ガス・食品アイテムごとに分類し、なるべく複雑さを回避した気候モデルを用いることで、個別のガス・食品アイテム毎に将来の温暖化への寄与度と緩和策の便益の評価を試みました。

分析は、2100年までに食料消費だけで温暖化を1℃高めかねず、その75%はメタン排出源(反芻動物食肉、乳製品、コメ)によるものと推計しました。論文はまた、予測される温室効果の55%相当を、生産慣行の改善、健康的な食生活、消費・小売りレベルでの食料廃棄削減、等の対策を実施することで回避しうることを示しました。

論文は、既存文献を引用し、農業分野は世界の人為的なメタン排出の約半分、亜酸化窒素排出の3分の2、そして二酸化炭素排出の3%に寄与しているとします。一方、論文は、パリ協定における国が定める貢献において、農業における緩和策を提案している国は少数派であることに言及し、食料システムからの削減についての合意形成を呼びかけています。

 

(参考文献)
Ivanovich, C.C., Sun, T., Gordon, D.R. et al. Future warming from global food consumption. Nat. Clim. Chang. (2023). https://doi.org/10.1038/s41558-023-01605-8

 

 (文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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