Pick Up

741. 世界水の日

関連プログラム
環境 情報


741. 世界水の日

3月22日は世界水の日です。世界水の日は、水と衛生の危機を解決するための変化を加速することを目的として制定されました。

  • 毎年140万人が死亡し、7400万人の命が水や衛生設備の不足に関連する病気によって短くなっています。(WHO2022)
  • 世界で20億人もの方が安全な飲料水を利用できません。(WHO/UNICEF 2021)
  • 世界の水需要(取水量)は、2050年までに55%増加すると予測されています。(OECD2012)

3月20日に公表された国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次統合報告書も、気候変動に伴い、水関連の課題が増加し、食料栄養・水の安全保障を脅かす可能性を指摘しています。 水はすべての人に影響を与えるため、すべての人が行動を起こす必要があります。


昨年、世界水の日を記念して出版された2022年国連世界水開発レポートは地下水をテーマに取り上げました。

  • 地下水は地球上の淡水の約99%を占めます。地下水は水が行き届かない多くの農村の飲料水として、また、約25%の地下水は灌漑用として取水されています。
  • 地下水は水と食料の安全保障にとって重要な役割を果たしています。主に降雨パターンの変動に関連して、すべてのセクターの水需要の増加により、地下水への依存は増加します。
  • 地下水の可能性を最大限に引き出すためには、地下水を持続的に管理し利用するための強力で協調的な取組みが必要です。

 

地下水の世界的な危機的状況の中で、島嶼国や砂漠地域など淡水や地下水の利用が困難な地域では、飲料水などの利用のために、海水や塩分を含む水を淡水として利用しなければならない場合もあります。海水などから塩類を析出するためには、大量の水分を蒸発させる必要があり、大きなエネルギーを要するか、さもなくばイノベーションに頼る必要があります。

こうした目的意識を背景に、国際農研で約10年前に実施した島嶼環境保全プロジェクトは、干ばつに苦しむマーシャル諸島共和国において太陽光を利用して海水を淡水化する装置の開発に取り組みました(意匠登録:1464111号・1464112号、写真左)。この装置は太陽光を利用することにより、CO2の発生を完全にゼロにでき、カーボンニュートラルへも貢献します。

また、同様の技術思想は、砂漠化が深刻な乾燥地の灌漑農業地域においても活用できる可能性を秘めています。そのためには、吸水吸熱体を畝間、用水路、及び圃場の湛水・塩類集積地域に設置することで、太陽光のみを利用し、塩水かんがいや排水の塩類を炭素繊維不織布上に析出させて取り除く方法の確立が必要になります。現在、担当研究者は、塩害対策用装置の改善を続けており(写真右)、装置の簡素化により処理コストの削減を目指しています。こうした技術は、将来、灌漑に起因した土壌塩類化により砂漠化が進行しているインド国北西部のような地域において、集積する塩類を減少させたり、干ばつ時の造水に使用することが期待されています。皆様との情報共有・交流の場及びこの技術の啓蒙・普及の場として、研究会の立ち上げを検討しています。

 

(参考文献)
幸田和久(2018)太陽光淡水化装置のアクションリサーチ -マーシャル諸島共和国マジュロ環礁の事例より― 開発学研究 第29巻第2号(通巻107号)2018.12

 

(文責:農村開発領域 幸田和久・元琉球大学産学官連携推進機構教授 近藤義和)


 

関連するページ