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739. 穀物の需給とウクライナの生産・輸出動向

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739. 穀物の需給とウクライナの生産・輸出動向

農林水産省は、毎月食料安全保障月報を公開し、米国農務省(USDA)や国連食糧農業機関(FAO)、各国の報告書の公表資料を基に、農産物の需給や相場について報告しています。以下、2月食料安全保障月報の本文より要約です。

ウクライナ農業政策食料省の2月17日報告によると、2022/23年度の小麦の収穫が終了し、収穫予定面積のほぼ100%に相当する2,020万トンが収穫された。また、収穫が遅れていたトウモロコシも収穫終盤となり、収穫予定面積の94%に相当する2,650万トンが収穫された。また、同省2月14日報告によると、2023/24年度の冬小麦の作付面積は前年度より19%、700万ha減少し、2,200万haとなる見通し。

中国の海関統計によると、2022年の穀物輸入量について、トウモロコシは対前年比27%減と大きく減少したものの、小麦とコメはそれぞれ対前年比2%、60%増となった。トウモロコシの輸入減は、国内生産量が過去最大となり、また、アメリカとウクライナからの輸入が減少したため。コメの輸入増は、2022年の小麦とトウモロコシの価格高騰に対して砕米の輸入が増加したため。

USDAの報告書によると、アメリカ産の穀物の輸出価格が他国産に比べて高く、輸出競争力が落ちている。その主因は、ミシシッピ川の水位低下による国内輸送経費の高騰である。小麦の輸出量はロシアとオーストラリア、トウモロコシの輸出量はブラジルの後塵を拝している。
USDAの報告書によると、ロシアでの小麦の生産量は対前年比21%増の9,200万トン、大麦の生産量は対前年比23%贈の2,150万トンと過去最大となる見通し。輸出量においても小麦は32%増の4,530万トンと過去最大を記録する見通し。

注目すべきは、ラニーニャ現象による高温乾燥の影響を受けた南米の南部であり、特にアルゼンチンは過去60年間で最悪の干ばつ被害を受けている。成育後期の降水量が少なかった小麦、降雨不足のため作付けが2月にずれ込んだ大豆やトウモロコシの生産量は、減産の見通しである。また、降水量不足のため、パラナ川の水位が大きく低下し、穀物の輸送に支障をきたしている。

食料安全保障月報には、農産物価格や在庫量などの推移の図が多く掲載され、世界の農産物需給の動向を分かりやすく示しています。国際農林水産業研究センター発行のPick Up No.738「黒海地域からの食料・肥料輸出に関する国際協調のゆくえ」と併せてお読みください。

 

*本日の記事は、農林水産省 大臣官房 政策課 食料安全保障室の許可をいただいたうえで掲載しております。
(出典):月報バックナンバーhttps://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_rep/monthly/r4index.html

    
(文責:社会科学領域 古家淳)

 

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