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728. 世界の淡水貯水量の変化

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728. 世界の淡水貯水量の変化

今人類は地球が持続的に供給できる天然資源の約1.7倍もの資源を消費しているとされています。現状のままでの生産、消費、廃棄状況が続けば2050年までにこの数値は2倍に達し、水を含む多くの天然資源が再生できず失われてしまうことになります。

地球の表面の3分の2は水で覆われていて、およそ14億立方キロメートルの水があると言われています。しかし、一言で水と言っても我々が使用できる水は海水をのぞいた淡水だけであり、地球上の水のわずか2.5%程度にすぎません。さらに、氷河や地下水などを除いた人が利用しやすい状態である淡水(河川や湖沼等)は0.01%しかありません。

 


今日はその貴重な淡水資源について、国際水管理研究所(IWMI)の研究者らが執筆した報告書「世界の淡水貯水量の変化」より、貯水量の変化と要因について紹介します。

水は天然貯水(氷河、永久凍土、地下水、湖、湿地や土壌など)と人工貯水(貯水池や水田)の2通りの貯水方法で維持されており、水の需給の時間・空間的不均衡に対応するうえで重要な役割を果たしています。

気候変動のインパクトがより深刻化するにつれ、多くの国の適応戦略において貯水の重要性はますます高まりつつあります。にもかかわらず、水資源の空間的分布の不均一さやモニタリングの困難さにより、近年まで世界全体の淡水貯水量とその変化の程度について殆ど知られていませんでした。これに対し、近年、地球観測技術(Earth observation)やコンピューターモデリング技術(Computer modelling)によって水資源の貯蔵量とその変化が予測できるようになりつつあります。

最初に水の貯水量の変化についてですが、現在世界人口が1年間で使用する水はおよそ24兆立方メートル(24,000 billion cubic meters (Bm3)y-1 )とされています。一方、報告書によると、1971-2020年までの50年で世界の水資源は27兆立方メートル減少したと計算されています。つまり地球規模ではこの期間1年分の水資源が失われたことになります。

次に貯水量の変化についてです。変化を引き起こす要因は人為的要因と気候要因の2つがあります。人為的要因とは貯水量に直接影響を与えるものを指し、農業や工業用の利用がここに含まれます。また今回の研究では、氷河を除く貯水量に対する人為的影響の程度が世界的な貯水量の3-5%に相当することが判明しました。陸域の淡水貯水量に及ぼす気候要因については、近年まで小さいものと考えられてきましたが、最近の推計によると人為的要因と同程度あるいは上回るのではないかとされています。いずれにせよ、人間が気候変動を起こす主要なアクターであることを踏まえれば、我々は世界の貯水量の変化に直接及び間接的影響を与えていると言えるでしょう。

人為的活動が多面的にかかわっている地球規模での貯水量の変化は地域レベルの水アクセスに様々なストレスを与えていることになります。地域レベルにおいては生活水や農業用水、工業用水などどのセクターがどれぐらいのインパクトを受けて、実際の水アクセスがどのように制限されるかが重要です。

地域ごとの社会的経済的状況、気候や位置条件、人口密度などに応じ、水ストレスに対する適応力は異なります。限られた貯水源に頼りすぎず、できるだけ多くの貯水源を確保する必要があります。政策支援やインフラ整備が必要不可欠だと考えられます。

どの国にとっても、天然貯水と人工貯水を組み合わせながら、起こり得る水リスクに適応できる水資源の管理が、水の安全保障の前提条件になるのです。

 


(参考文献)

McCartney, M.; Rex, W.; Yu, W.; Uhlenbrook, S.; von Gnechten, R. 2022. Change in global freshwater storage. Colombo, Sri Lanka: International Water Management Institute (IWMI). 25p. (IWMI Working Paper 202). [doi: https://doi.org/10.5337/2022.204]

 

(情報プログラム:トモルソロンゴ、飯山みゆき)


 

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