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727. FAO報告書「草地における土壌炭素のグローバル評価」

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727. FAO報告書「草地における土壌炭素のグローバル評価」

FAOが最近公表した報告書「Global assessment of soil carbon in grasslands-From current stock estimates to sequestration potential-(草地における土壌炭素のグローバル評価~現在の資源量推定から吸収量ポテンシャルまで~)」によると、草地の管理方法を改善することにより、炭素吸収源としての土壌の能力を高め、各国が気候目標を達成するのに貢献することができると結論付けています。以下要約します。

土壌は、海洋に続く2番目に大きな炭素吸収源で、草地には世界の土壌有機炭素(SOC)蓄積量の約20%が含まれており、地球規模の気候変動にも重要な役割を担っています。世界的に見ると、2010年には深さ30cmまでの草地土壌に年間63.5メガトン(Mt)の炭素が吸収されたと推定されています。また、管理されていない草地(未改良草地)が33.8 Mt Cで、管理された草地(改良草地)の29.8 Mt Cよりもわずかに多く蓄積されており、それぞれのSOC蓄積量は53トンC/ha、50トンC/haでした。

現在の炭素蓄積量を維持するためには、改良草地は年間2.1トンC/ha必要とされ、未改良草地の1.3トンC/haよりも高い炭素投入が必要です。このような傾向は、世界的にみられていますが、推定した値の空間的な変動が大きいため、国レベルでの土壌の状態が世界的な推定値とは大きく異なる可能性があります。多くの草地では炭素収支がプラスでしたが、地域で見ると農業活動や気候変動などの影響により、東アジア、中南米、赤道直下アフリカで炭素収支がマイナスになっていました。

SOCの貯留を促進する管理手法を20年間適用し続け、利用可能な草地の深さ30cmまでのSOCの含有量を0.3%増加させた場合、年間で0.3トンC/ha貯留できることが分かりました。サハラ以南のアフリカと南アジアでの1haあたりの炭素貯留の可能性が最も高く、それぞれ年間で0.41トンC/haおよび0.33トンで、オセアニア、北アメリカ、東アジアがそれに続きました。草地ではSOCのレベルが低いため、深刻な土壌劣化問題引き起こす可能性を抱えているため、SOCの貯留を強化する必要があります。

全世界の土壌中に存在する炭素の量を毎年4/1000ずつ増やすことで、大気CO2の増加量をゼロに抑えることを目指す『4/1000イニシアチブ』では、実質的な地球規模の緩和を実現するために、1年あたり3.5 ペタグラム(Pg) Cを貯留するという意欲的な目標を示しています(1Pg=1000Mt)。試算では、この目標の17%は草地の上部30cmで達成でき、家畜糞尿、アグロフォレストリー、輪作放牧など、SOCを高める管理を採用した後に少なくとも20年間継続し、毎年0.18-0.41トンC/haのSOC貯蔵量を増加させることが必要です。この試算には、気候の違いや土壌プロセスの重要な問題、特に栄養や水の制限、バイオマス生産量や転換率などは考慮されていませんが、草地における土壌成分の増加による炭素貯留は、短期間でその量を増加させるために達成可能で効果的な方法です。

今後は、国レベルでの家畜管理方法の影響を探るための空間的研究と、農場レベルでの家畜ベースの生態系における管理による炭素貯留のモニタリングに重点を置く必要があります。

 

(参考)
Global assessment of soil carbon in grasslands -From current stock estimates to sequestration potential-
https://www.fao.org/documents/card/en/c/cc3981en
FAO publishes its first Global Assessment of Soil Carbon in Grasslands
https://www.fao.org/newsroom/detail/fao-publishes-its-first-global-asse…
4/1000イニシアチブ
https://4p1000.org/

 

(文責:情報広報室 金森紀仁)
 

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