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714. 土壌微生物の力で食料生産と土壌肥沃度の向上を両立

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714. 土壌微生物の力で食料生産と土壌肥沃度の向上を両立

ブルキナファソを含むサブサハラ・アフリカでは、厳しい気象条件や肥沃度の低い土壌など、多くの要因により作物生産が制限されており、食料不足が慢性化しています。特にリンの不足が深刻なため、リン肥料による補給が必要ですが、輸入に依存しているためその利用は限られています。加えて、昨今の肥料価格の世界的高騰により、小規模農家において、施肥量を増加させることは困難な状況になっています。

そこで国際農研では、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)の連携事業である地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「ブルキナファソ産リン鉱石を用いた施肥栽培促進モデルの構築」の支援のもと、ブルキナファソ国環境農業研究所およびジョセフ‐キゼルボ大学と連携し、未利用資源であるブルキナファソ産低品位リン鉱石を、現地で容易に入手できる作物残渣(ソルガムの茎や葉)およびリン酸塩可溶化微生物を豊富に含む植物根の近傍の土壌とともに発酵させて肥料化する技術を開発しました。これまでに、リン鉱石と土壌を添加することによって、堆肥中の有効態リン含量やリン酸塩の可溶化に関連する微生物や酵素の量が増加することを明らかにしており、研究成果は2020年にFrontiers in Environmental Science誌に発表しています。

加えて、現地での圃場試験を実施し、リン鉱石土壌添加堆肥は市販の化学肥料と同等の大きな増収効果を持つことを示しました。さらに土壌微生物量の増加や土壌化学性の向上効果も認められたことから、土壌劣化に対する有効な技術となることを示し、研究成果を2022年にScientific Reports誌に発表し、プレスリリースをしています。

本研究で開発したリン鉱石土壌添加堆肥は、現地農家にとって新たな選択肢となり、現地未利用資源の活用によるサブサハラ・アフリカでの食料問題への貢献と、世界的な化学肥料価格の急騰に対する有効な技術になることが期待されます。

 

(参考文献)
Sarr, et al. (2020). Phosphate-Solubilizing Fungi and Alkaline Phosphatase Trigger the P Solubilization During the Co-composting of Sorghum Straw Residues With Burkina Faso Phosphate Rock. Front. Environ. Sci. 8, 559195. https://doi.org/10.3389/fenvs.2020.559195

Sagnon et al. (2022). Amendment with Burkina Faso phosphate rock-enriched composts alters soil chemical properties and microbial structure, and enhances sorghum agronomic performance. Sci Rep 12, 13945. https://doi.org/10.1038/s41598-022-18318-1

令和4年10月20日プレスリリース「低品位リン鉱石を活用した有機肥料製造技術を開発―土壌微生物の働きにより化学肥料と同等の増収効果―」https://www.jircas.go.jp/ja/release/2022/press202212

 

(文責:農村開発領域:岩崎真也、生産環境・畜産領域:中村智史、南雲不二男、サール・パパ・サリオウ)


 

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