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701. メタン削減の実現に向けて

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701. メタン削減の実現に向けて

温室効果ガスの中でもメタンは非常に強力なガスとされ、大気中メタンの発生源には、湿原等の自然由来のものと、農業・化石燃料採掘・埋立地や廃棄物・火災等の人為的活動由来のものがあります。

昨年末のPick Up記事で紹介したように、近年、大気中のメタンが記録的なレベルに達し、ここ数年間は驚異的な上昇率で増えていると報告されています。その原因として、皮肉にもCOVID-19パンデミック抑制のためのロックダウンでメタンを分解する大気中の汚染物質(OH)排出が鈍化したこと、および北半球における暖かく湿った天候のもと、湿地帯における有機物の分解が早くなりメタン排出が進む気候変動フィードバックの可能性、が指摘されています。

一方、気候変動抑制ゴールの達成のためには、人為的なメタン排出の抑制に人類が一丸になって取り組む必要があります。1月12日に公表されたNature Climate Change誌の論考は、メタン・ポシブルと題し、メタン削減実現の緊急性を提案しました。 

2030年までにメタン排出を30%削減するというグローバル・メタン・プレッジ(GMP)については、2022年11月時点で150か国が参加しています。国際機関の分析によると、農業部門、とりわけ家畜および水田稲作からの削減努力がなければ、2030年までに大気中のメタンは2020年水準比で5-16%上昇、同様に都市廃棄物・排水からの排出は6-18%増えると予測されています。中東・アフリカ・アジアにおいて全セクターからのメタン排出の大幅な増加が見込まれています。

既に利用可能な技術的・生態学的・社会的解決法を、いつ・どこで実施するかについては、地上観測および衛星データ等が有用です。例えば2010-2017年の中国におけるメタン排出トレンドを解析した研究は、南東部では小規模の炭鉱閉鎖による排出減少、北部では大規模炭鉱の統合による排出増加が観察されました。同時に、東部・中部では、稲作地帯からの予期せぬ排出増加がありました。かつては不可能であったトレンドの補足が可能になっています。

論稿はさらに、排出削減を実行に移す上で、複数のメタン削減イニシアチブのフィージビリティ評価を行うことで、理論上でも実践上でも効果的な政策・アクションに繋がるとしています。

論稿は、科学的知識・技術的リソース・GMP署名の150か国のコミットメントのもとで、メタン排出削減の遅れは許容できないとし、2023年をメタン緩和策の進展にとって重要な年と位置付けました。

 

(参考文献)
Methane possible. Nat. Clim. Chang. 13, 1 (2023). https://doi.org/10.1038/s41558-022-01590-4

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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