Pick Up
543. 干ばつリスクに対するプロアクティブなマネジメントの必要性
543. 干ばつリスクに対するプロアクティブなマネジメントの必要性
2022年5月、国際連合砂漠化対処条約(UNCCD)が発表した報告書(DROUGHT IN NUMBERS 2022- restoration for readiness and resilience -)によると、近年、干ばつの頻度と強度が増す傾向が強まり、人間社会だけでなく、全ての生命が依存する生態系システム全体に影響を及ぼしつつあります。
報告書は、衝撃的な数字を挙げています。
- 2000年以来、干ばつの数と期間は29%上昇している
- 1970年から2019年、気象・気候・水関係の災害は、災害による死者の50%、災害関係の死者の45%、を占め、とりわけその被害は途上国に集中している
- 干ばつは自然災害の15%を占めるが、最も人的被害が甚大で、1970-2019年の死者は65万人に及ぶ
- 1998年から2017年にかけ、干ばつの世界的な経済損失は1240億米ドルに相当する
- 2022年、23億人以上の人々が水ストレスに直面し、1.6億人の子供たちが厳しく長引く干ばつに晒されている
対応策が早急にとられることがなければ、さらなる危機が予測されています。
- 2030年までに、7億人の人々が干ばつによって移住を余儀なくされる
- 2040年までに4人に1人の子供が、極度の水不足を経験する地域に住むことになる
- 2050年までに干ばつは世界人口の4分の3に影響を与え、今日の36億人に対し、48-57億人が少なくとも1年に1か月ほどの水不足を経験しうるそして主に干ばつ、そして水不足に伴う作物生産性の下落・海面上昇・人口増等との原因とも相まって、2050年までに2.16億人の人々が移住を余儀なくされる
最も包括的な解決方は、悪化している水循環と土壌肥沃度の喪失の原因となっている土地回復策にあります。ランドスケープを回復し、自然にならって昨日する生態系システムを創出する必要があります。危機に対する場当たり的な対応策から、干ばつリスクに対するプロアクティブなマネジメントアプローチ(a paradigm shift from ‘reactive’ and ‘crisis-based’ approaches to ‘proactive’ and ‘risk-based’ drought management approaches)が求められ、そのための十分な財政措置・政治的意思に基づく調整・協力が必要となります。とくに次のアクションが必要です。
- より少ない土地・水で食料増産を可能にする持続的で効率的な農業管理技術
- 植物性食品を中心とした食生活への移行による人類の食料・飼料・繊維の生産・消費体系の変容
- 全てのレベルでの政策・連携
- 統合された干ばつアクション計画の策定・実施
- 国境を越えた効果的な早期警戒システムの設置
- 衛星監視やAIにより、より精密な意思決定を可能にする新技術の登用
- 連続的な改善を伴う監視システム
- 現場レベルでの干ばつへの強靭性向上のための持続的財政措置の調達
- 土壌の健康への投資
- 農家・共同体・ビジネス・消費者・投資家・企業、何よりも若者を巻き込むこと
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)